ガタつく鍵盤に 苛立ちながら オレは『最後の恋』を 弾いている おそらくこの店で 100万回は弾いただろう 涙を浮かべる奴 チークを踊る奴 全く耳を貸さない奴 いづれも 100万回繰り返された フロアの光景だ グラスが 砕ける音がする でも揉め事じゃない 古い「武勇伝」に それぞれ磨きをかけ オトコ達はそれで 満足してる 連れられてきた オンナ達は 若く美しいが 退屈し 困惑している いったい何時になったのか 誰も知らない 酔っているのか そうでもないのか わからない 新しいタトゥーを 自慢したいが 何処に彫ったのか わからない 夫なのか 恋人なのか 今はどちらなのか わからない ハンドバッグの中 何処に口紅が 紛れ込んだか わからない だから多分 夜は もう遅いのだと思う オレも演奏を 終わらせよう エンディングのコードを 弾き終えると 知らない奴が ピアノの横に近づき 話しかけてきた