(1) 『海を渡る「慰安婦」問題 ー右派の「歴史戦」を問うー』は、岩波書店から2016年に出た本だ。著者は山口智美、能川元一、テッサ・モーリス-スズキ、小山エミと、テッサさんを除けばツイッターでおなじみの論客。 そのわりに、きちんと紹介されていないかもしれない。今回、ある特定の意図をもって、第2章アメリカ「慰安婦」碑設置への攻撃(小山エミ)の部分を読んでみたい。 2010年アメリカのニュージャージー州パリセイズパークに「慰安婦」碑が建てられた。次にカリフォルニア州グレンデール市でも「慰安婦」碑が計画されたが、これには一部の日系人による反対運動が起こった。ロサンゼルスでのこの反対運動の中心にいたのは目良浩一という人。この運動に集まった人の多くは1990年前後以降に渡米した新一世と呼ばれる人びと。それに対して、大戦中の日系人収容政策についてアメリカ政府から謝罪と補償を求めて以前から運動をしてい