脱北者が北朝鮮政府を訴えた「日本初」の訴訟~「帰国事業」の実態と責任を問う裁判の歴史的意義 除斥期間、主権免除……原告に立ちはだかるいくつもの壁 北野隆一 朝日新聞編集委員 日本の法廷で初めて、北朝鮮政府が被告に 10月14日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を被告とする裁判の口頭弁論が、東京地裁(五十嵐章裕裁判長)で開かれた。原告の脱北者5人は、在日朝鮮人らの帰国事業(帰還事業)に参加して北朝鮮に渡り、その数十年後に北朝鮮を脱出(脱北)して日本に戻った。北朝鮮政府(代表者・金正恩国務委員会委員長)に対し、総額5億円の損害賠償を求めている。 原告代理人の福田健治弁護士は意見陳述のはじめに「今日は歴史的な裁判の日。日本の法廷で初めて、北朝鮮政府が被告となり、その人権侵害の一端が審理される」と語った。 法廷は午前から夕方まで開かれたが、被告席は空席のままだった。裁判で被告側が出廷せず、書類も提