日本経済に新しい変化が生じている。円安にもかかわらず輸出が伸びず貿易赤字が拡大している。原発停止に伴う化石燃料の輸入増大が主要因(だから原発の再稼働を)との論調も強まっている。尤(もっと)もらしい議論には2つの誤りと1つの重要な示唆が含まれる。 2つの誤りから見る。長年、貿易黒字国だった日本は2013年度の貿易赤字が13・7兆円と過去最大になった。暦年ベースでは名目GDP(国内総生産)比2・4%の赤字である。東日本大震災(11年)前はGDP比約2%の黒字だから急激で大幅な変化だ。 ≪主因は製造業のアジア移転≫ だが、貿易赤字自体を罪悪視する、「貿易赤字で大変だ」といった議論は根本的に誤っている。赤字が悪くて黒字が好ましい…まさに重商主義の発想に他ならない。アダム・スミスの名著『国富論』は相当部分を重商主義の誤りを正すために割いている。過去の実証分析でも、貿易赤字で成長率が低下するとか金利が