博覧強記の料理人、美味の迷宮を東奔西走す! 日本の「おいしさ」の地域差に迫る連載。 前回に続き、知名度抜群のご当地味噌、八丁味噌について考えます。 醤油と味噌③ 八丁味噌という特異点 社会人2年目で、転勤をきっかけに、僕の初めての名古屋暮らしが始まりました。 名古屋支社出勤初日に、先輩方にランチに連れて行ってもらいました。喫茶店のランチなのにそこらの定食屋よりボリュームも品数も充実している、という名古屋ならではの文化に少したじろぎつつ、まずは味噌汁を啜った僕に、愛知県南部三河地方出身の先輩がこんなことを言います。 「名古屋じゃ味噌汁はどこ行ってもそういう『赤だし』だでよう、よそからきたら最初はキツいかもしれんけど、そのうち慣れるでまーいっとき我慢したってちょう」 しかし実は、僕はその時点でウキウキでした。なぜなら子供のころから、赤だしの味噌汁は大好きだったからです。実家では、常に2種類の味
