南京事件否定論者の主張を読んでいてしばしば巡りあうのが、事件=あった派に対する「そんなに日本人を貶めたいのか」「われわれの先祖は鬼畜だったというのか」といった類いの非難である。私のような素人が改めて南京事件について調べ直すようになり、余暇を割いてまで発言せねばと思うようになったのはそもそも否定論がはびこっているからで、みなが事件の存在そのものはきちんと認めているのであれば、私だって専門家に任せて別の問題に時間を使いたいところだ…というのはともかくとして、「あった」派の南京事件研究に対する否定派の拒否反応は極めて興味深い問題を示唆しているように思われる。 私自身も含め、私が見聞したかぎりでの「あった派」の主張は事件をまず「旧日本軍」の問題として捉え、日本軍の体質であるとか制度、日中戦争の性格などとの関わりで解明しようとしているわけである。一部の高級将校を除けば、個人の資質に原因を帰するような