広島で原爆に遭いながらも力強く生きる少年を描いた漫画「はだしのゲン」の作者、中沢啓治さん(70)(埼玉県所沢市)が漫画家を引退した。 白内障などで視力が衰え、細かな線が描けなくなったためで、今後は油絵などで被爆の恐ろしさを訴えるという。中沢さんは「核兵器廃絶をこの目で確かめるまで、芸術家として頑張りたい」と話している。 中沢さんは6歳の時、爆心地から1・2キロで被爆し、父と姉、弟を失った。1966年、亡くなった母を火葬した際に骨は崩れて形を残さず、「原爆は母の骨まで奪った」と、原爆をテーマに作品を描くことを決めた。 7年後に「はだしのゲン」の連載を始め、単行本の発行部数は1000万部を超え、15か国語に翻訳された。ゲンがフランスで絵の修業をする続編の構想を練っていたが、視力は手術でも回復しなかった。