博士論文一覧 博士論文要旨論文題目:近代日本社会と公娼制度―民衆史と国際関係の視点から― 著者:小野沢あかね (ONOZAWA, Akane) 博士号取得年月日:2011年3月9日→審査要旨へ 近代日本社会においては、法的には人身売買が禁止されていたにもかかわらず、事実上は、芸娼妓などの人身売買が行われ続けた。主として芸娼妓の親権者が貸座敷などから受け取る前借金を、芸娼妓稼業を通じて返済するまで彼女たちの人身の自由は事実上奪われており、しかも前借金の返済自体が困難をきわめた。娼妓は通例周旋人の手を経て抱え主に抱えられたが、その際貸座敷と娼妓の間で娼妓の親権者を連帯保証人として金銭消費貸借証書がかわされた。その証書では娼妓稼業については言及されていないが、同時にかわされる形式上別個の娼妓稼業契約で、娼妓稼業によって借金を返済していくことが契約されていたのである。近代日本の公娼制度は、このよう