第20回 大阪西成・女医不審死事件 (2009年11月) 大阪市西成区萩之茶屋。かつては「釜ヶ崎」の地名で知られ、現在は「あいりん地区」と呼ばれる日雇い労働者の街である。多くの労働者が簡易宿泊所で暮らし、最近では住民の高齢化による孤独死や、生活保護の急増が問題となっている。路上生活者も多く存在し、半径300メートルの狭い地域に3万人もの人々がひしめき合いながら暮らしているという。 2009年11月16日午前1時20分。西成を流れる木津川の千本松渡船場で、女性の遺体が釣り人によって発見された。女性の名は矢島祥子さん。群馬県で生まれ、群馬大学医学部卒業後に医師となった祥子さんは、2002年頃からあいりん地区でのボランティアに参加し、亡くなる2年前からは西成の診療所に医師として勤務していた。自身の生活を切り詰め、医師としての給料をボランティアに費やしていた祥子さんの献身的な活動は、地元でもよく知