未亡人は言った。本田宗一郎を殺したい

未亡人は言った。「本田宗一郎を殺したい」（ジョー・ホンダ/ＫＫベストセラーズ/1995.5.3） F1GPを長い期間見ているからといって、必ずしも、その解釈や意見が、長く見ていない人間のそれよりも正しい、とは限らない、と思う。だが、長く見ているがゆえに述べることのできる、此方には思い及ばない意見がある。そこに、新しい発見や刺激を見出すことがある。 本書は、1967年からF1の現場を回った著者の、事故死したドライバーたちに関する記述だ。 著者は、Ｆ1グランプリ取材を始めた最初のレースの67年モナコで、ロレンツォ・バンディーニが、燃え上がるマシンの中で死んでいくのを目の前で見た。その後何度も死亡事故に遭遇し、70年のピアス・カレッジの死亡の直後には、そういう世界に嫌気がさし、衝動的に日本に帰る。暫くしてから、レーシングドライバーの死は避けることのできない現実であり、その現実から逃げても何も