本年2月、鈴木孝夫先生(言語社会学者、慶應義塾大学名誉教授)がお亡くなりになった。94歳というお年だったので、大往生と言ってよいと思うが、この人は不死身なのではと思っていた何人かのお一人であったので、いささか驚かされた。 1980年代の(文系)大学受験生にとって、「鈴木孝夫」の名前は轟いていた。『ことばと文化』が毎年、各大学の現代文のどこかに出題され、必読文献に数えられていたからだ。皆、この岩波新書は持っていたように思うが、きちんと読んでいたかどうかは定かではない。ただ、その名前は誰もが知っていたと思う。 そのようなわけで慶應に入った時、名前を知っている数少ない教授だったが、所属が文学部ではなく、「言語文化研究所」なるところだとは入って初めて知った。 在学中は残念なことにその講義を拝聴することはなかったのだが、慶應義塾大学出版会に入り、大学の機関誌を担当するようになり、鈴木先生と接する機会