チベットでは独特の密教文化が発達し、怪奇な姿の尊像や、驚くほど緻密な曼荼羅が描かれました。これらの仏画は木版でも刷られ、デルゲという町では現在も木版画がさかんに制作されています。そうした「デルゲ版」の魅力を、約30点の作品を通じて紹介します。 日本とならび、密教美術の宝庫として知られるのがチベットです。仏教のふるさとインドでは、5~6世紀から13世紀にかけて密教が発達しました。日本が受容したのは、7~8世紀の密教です。これに対し、チベットでは9世紀以降の密教を受容しました。この時代の密教を、後期密教といいます。受容した密教の発達段階の差により、日本とチベットでは、同じ種類のほとけでも非常に異なった姿に表現されることがしばしばあります。驚くほど多くの顔や手足をもつ怪奇な像や、父母仏と呼ばれる、男女のほとけが抱き合う姿の像は、後期密教美術の大きな特徴です。 チベット密教のほとけは、像容が複雑で