「解雇特区」をどう考えたらよいか ―雇用規制は証拠に基づく議論を― 原田 泰/早稲田大学政治経済学部教授 安倍政権が規制緩和の目玉の一つとしていた雇用規制緩和特区(一部のマスコミでは「解雇特区」と呼ばれていた)は結局見送られるようである。雇用規制緩和特区とは、「国家戦略特区」の中で、(1)解雇ルール(2)労働時間法制(3)有期雇用制度の3点を見直し、外国企業や新興企業の誘致に結び付けようとしたものだ。しかし、厚生労働省が、「憲法上、特区内外で労働規制に差をつけられない」と主張したため、特区は実現しなかった。 (1)の解雇ルールの見直しとは、労使が自由に解雇に関するルールを決め、使用者がより自由に解雇できるようにしようというものだ。(2)の労働時間法制の見直しは、労働時間で成果が測れる訳ではないホワイトカラーを中心に、一定水準以上の収入がある人の残業代をゼロにできるようにするというものだ。(