宮崎県で猛威をふるっている豚や牛の伝染病、口蹄(こうてい)疫。宮崎県から子牛が出荷できず、子牛を育てられないことから各地のブランド牛にまで大きな影響が及ぶことが必至の情勢となってきた。「他人事ではない」。口蹄疫問題で揺れるブランド牛の飼育現場からは不安の声も漏れる。東京都あきる野市でブランド牛「秋川牛」を育てる牧場を訪ねてみた。(高橋裕子)木の香りが漂う畜舎 JR小作(おざく)駅=東京都羽村市=からバスに揺られて10分。都内とは思えないのどかな田園風景が広がる中に、「秋川牛」を育てる肥育農家、竹内孝司さん(69)の牧場はある。 バス通りに面した畜舎をのぞき込むと、体長170センチはあろうかという牛が、さくで区切られたスペース内で8頭ずつゆったりと横たわっていた。多くの牛がいるのに静かで、畜舎の天井の扇風機が回る音が低く聞こえるのみ。畜舎内は畜舎独特のにおいはせず、檜風呂のような木の香りがす