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ブックマーク / saebou.hatenablog.com (12)

  • 受動的な創られたヴィラン~『ジョーカー』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『ジョーカー』を見てきた。『バットマン』の悪役であるジョーカーがどうやってジョーカーになったのかを描いた作品…というのは建前で、ほとんど別の映画である。 wwws.warnerbros.co.jp ゴッサムシティに住むアーサー(ホアキン・フェニックス)はピエロの仕事をしながら母ペニー(フランセス・コンロイ)の介護をしている。アーサーは突然笑い出してしまうおそらくトゥレット症と思われる症状を抱え、精神的にも不安定でカウンセリングと投薬を受けているが、それでも憧れの仕事であるスタンダップコメディアンを目指して頑張っていた。しかしながらゴッサムシティが荒廃するとともにアーサーの人生はどんどん下り坂になる。ピエロの仕事の最中に悪ガキどもに襲われ、仕事はクビになるし、市当局が福祉を打ち切ったせいでカウンセリングも投薬も受けられなくなる。度重なる不幸のため限界になったアーサーをどんどん狂気が蝕んでいく

    受動的な創られたヴィラン~『ジョーカー』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
    hhasegawa
    hhasegawa 2019/10/30
    「ビデオがテレビ放映されて人気になる下りは明らかに今のバイラルビデオのそれなのだが、バイラルビデオなんかない時代にこんなことあるかなぁ…という印象」むしろ意識的に仕掛けられた時代錯誤と考えられまいか?
  • 北村紗衣編『共感覚から見えるもの−アートと科学を彩る五感の世界』刊行! - Commentarius Saevus

    北村紗衣編『共感覚から見えるもの−アートと科学を彩る五感の世界』(勉誠出版、2016)がとうとう刊行されました! 勉誠出版のサイトはこちら。 共感覚はひとつの刺激から二つ以上の感覚が発生する現象です。たとえば音に色が見えるとか、言葉に味がするとかです。生まれつきこういう感覚システムを持っている人がおり、私は文字に色が見える共感覚者です。たぶんこのブログを読んでいる人にもそこそこの数はいるんじゃないかなと思います。医学的な現象でオカルトとか超能力とは一切関係ありません。そんなに日常的に困ることはないですが、たまに共感覚のせいでちょっと混乱するというようなこともないわけではありません。 序論は共感覚についての研究史で、私が人文・芸術分野における共感覚のとらえ方の変化を書いております(これはほぼ『共感覚の地平』のアップデート版なんで、そんなに新鮮味は無いです)。科学研究についてもう一序論があり

    北村紗衣編『共感覚から見えるもの−アートと科学を彩る五感の世界』刊行! - Commentarius Saevus
    hhasegawa
    hhasegawa 2016/05/13
    かつてロンドンでしたユンガーと共感覚についての雑談から、声をおかけいただいたと認識している。拙論はその会話で出たほかの疑問(http://bit.ly/1T65Ybyなど)にも対応している、はず?
  • シェイクスピアはこうでなきゃ!〜カクシンハン『ジュリアス・シーザー』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    カクシンハンによる『ジュリアス・シーザー』を池袋のシアターグリーンで見てきた。非常に荒削りな演出でまだいくぶん完成してないところもあるのだが、それでも「シェイクスピアはこうでなきゃ!」というようなキレッキレの演出で大変に面白かった。絶対におすすめできる。 とにかく素晴らしいのは、日の舞台としては非常にきちんとシェイクスピアを現代の政治にリンクさせていることである。『ジュリアス・シーザー』は大変政治的な芝居で、英語圏ではオールフィメールでやるとか、サブサハラのアフリカの国家という設定でやるとか、とにかく現代政治とリンクさせた演出にすることが多い。私も、基的にこの芝居においてシーザーはローマで殺される偉人ではなく現代に生きる政治家であり、ローマは過去ではなく生々しい現実として表現されるべきだと思っているのだが、このカクシンハンの『ジュリアス・シーザー』はまさに現代日に生きている観客のため

    シェイクスピアはこうでなきゃ!〜カクシンハン『ジュリアス・シーザー』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
    hhasegawa
    hhasegawa 2016/01/22
    ということは共和政が立憲主義に対応するのか。確かに、国制を明示的に変革しないまま別の政体を実現する、というのは、「元首政の手口に学ぶ」ともいえる。むろん、それは「ローマではない(『ローマ法案内』)」。
  • 国会前抗議に行ってきた - Commentarius Saevus

    国会前の安保法制反対抗議に行ってきた。 前に反原発デモでちょっと不愉快な思いをしたことがあり(これはブログとかフェイスブックにも書いたはずだが)、元気がある時でないとちょっと日のデモに行く元気が出ないので、今回は学者の会に入るだけでプロテストには出かけていなかったのだが、首相のパフォーマンス等々があまりにもバカバカしいのと(なんだあの人魂は)、デモ参加者に対する性差別的な言動があまりにも目に付くので(学生団体のSEALDSに美人が多いことを売りにするとか)、学生時代に戻ってフェミニストっぽい簡易プラカードを作って行ってきた。 なお、マッドマックスのやつはともかく、裏側は日語のスローガンにしようと思ったのだが、漢字を使うと黒っぽくなってしまい、小さいプラカードだとかなり見栄えが悪くなるので、あきらめて両面英語にした。プラカードに英語が多いのを批判する向きもあるようだが、実際に作ると漢字を

    国会前抗議に行ってきた - Commentarius Saevus
    hhasegawa
    hhasegawa 2015/07/26
    「このスピーチで提示されている『平和な家族像』というのはむしろ首相とその一派が推し進めているものに近い」せっかく「自由と民主主義」のための学生緊急行動なんだし、計画中の与党大学サークルに入るのはどう?
  • 「省察」はなんと読み、なんの訳語か?Reflection vs. Meditation - Commentarius Saevus

    数日前にid:naokimedさんのこのツイートを見て、デカルトの『省察』は「せいさつ」と読むことを初めて知った。なんかエドマンド・バークの『フランス革命についての省察』は「しょうさつ」と読んでいるのしかきいたことないので、てっきり「しょうさつ」だと思っていた。 で、気になって数人の知人にきいてみたところ、なんか面白いかもしれないことがわかった。なんと、"Reflection"の訳語としての「省察」は「しょうさつ」と読まれる可能性が高いが、"Meditation"の訳語としての「省察」は「せいさつ」と読まれる可能性が高そうだということである。 とりあえずReflectionのほうなのだが、エドマンド・バークの『フランス革命の省察』は"Reflections on the Revolution in France"で読みは「しょうさつ」。行動主義で有名なスキナーの『人間と社会の省察』(Upo

    「省察」はなんと読み、なんの訳語か?Reflection vs. Meditation - Commentarius Saevus
    hhasegawa
    hhasegawa 2015/04/25
    類似のドイツ語»Betrachtung«は「省察(せいさつ)」と「考察」の二通りの訳がある模様。ドストエフスキーは 『悪霊(あくりょう)』で埴谷雄高は『死霊(しれい)』と、呉音漢音問題はほかにもある。
  • アメリカ人がヨーロッパで脳天気に『グラン・トリノ』を撮る〜『グランド・ブダペスト・ホテル』 - Commentarius Saevus

    『グランド・ブダペスト・ホテル』を見てきた。私、たぶんウェス・アンダーソンの映画って『天才マックスの世界』しか見てないような気がするので、二目ってことになる(っていうかなぜ『天才マックス』しか見てないんだろ…)。 舞台は東欧の架空の国、ズブロフカ。ここは昔は帝国の中心地、そのあと共産圏、今は東欧のまあなんかああいう国、ということらしい。1930年代に威容を誇ったグランド・ブダペスト・ホテルの運命を、伝説のコンシェルジュであるムッシュ・グスタフ(レイフ・ファインズ)とそのロビーボーイ、ゼロ(トニー・レヴォロリ、年取ってからはF・マーレイ・エイブラハム)を中心に、殺人事件恋愛話を絡めて語る、というもの。タイトルに「ホテル」が入っているが、所謂グランド・ホテル形式の話ではなく、ホテルの従業員を中心にした物語である。 この映画の面白いところは時系列である。基的に、この映画には以下四つの時間の

    アメリカ人がヨーロッパで脳天気に『グラン・トリノ』を撮る〜『グランド・ブダペスト・ホテル』 - Commentarius Saevus
    hhasegawa
    hhasegawa 2014/09/15
    ほぼ同意ながら、ズブロフカは東欧ではなくほぼオーストリア、それも「世紀末ヴィーン」の残照としての戦間期のそれに等しいということでは? つまり、舞台は箱庭的ヨーロッパというより端的にハプスブルクの残骸。
  • 月に帰るクィアな処女〜『かぐや姫の物語』 - Commentarius Saevus

    『かぐや姫の物語』を見てきた。話は誰でも知ってる『竹取物語』だし、絵画的な魅力の詰まった画面の処理とかフェミニズム的な物語、仏教的な要素などについては既にたくさんレビューが出ているのでもうあまり書くこともないだろうと思うのだが、ひとつ気付いたのはかぐや姫っていわゆるひとつの「クィアな処女」だったということである。今まで全然そういうことは考えたことなかったのだが、月の人で結婚を拒むという明らかな特徴があるのになんでそんなことに気付かなかったんだろう。 「クィアな処女」(queer virgin)というのはTheodora A. Jankowski, Pure Resistance: Queer Virginity in Early Modern English Drama (University of Pennsylvania Press, 2000)に出てくる概念である。ジャンコウスキの定

    月に帰るクィアな処女〜『かぐや姫の物語』 - Commentarius Saevus
    hhasegawa
    hhasegawa 2014/01/12
    この映画のかぐや姫は帝は拒絶しても最終的に性的なもの自体を拒絶しはせず、むしろ反性的な月の秩序とのあいだに対抗関係が成立するのでは。私の解釈はこの(http://bit.ly/1agiL5a)通り。
  • 同僚のおばちゃんをいじめることはなぜナチスに加担することと共通点があるのか〜『ハンナ・アーレント』 - Commentarius Saevus

    シネマカリテでようやく『ハンナ・アーレント』を見てきた。最初のうちは大混雑だったそうだが今はそうでもなくゆっくり楽しむことができたのだが、とにかくむちゃくちゃ良い映画である。哲学論争なんてなかなか映画化しにくい題材だと思うが、演出も演技も映像もよくできていて、先週見た『ゼロ・グラビティ』なんかより十倍はフェミニスト的でかつ面白い。 ストーリーのほうは哲学者アーレントがアメリカに渡り、『イェルサレムのアイヒマン』を書いた時期に焦点をあてたもの。アーレントがナチスに加担した師ハイデッガーや抑留の暗い記憶に悩まされつつもこの有名な著作を仕上げ、これによってユダヤ人コミュニティをも含むいろいろな人々からいじめや中傷を受けるのに果敢に応戦する、というものである。今からすると『イェルサレムのアイヒマン』における「悪の凡庸さ」(ホロコーストみたいな悪辣な迫害や殺戮というのはモンスターとかソシオパスみたい

    同僚のおばちゃんをいじめることはなぜナチスに加担することと共通点があるのか〜『ハンナ・アーレント』 - Commentarius Saevus
    hhasegawa
    hhasegawa 2014/01/06
    いい映画でもあるのだが、アーレント本はアイヒマンの主体性までは否定せず門地も学歴もない人間でも立身できるSSでの積極的勤務を「悪の凡庸さ」としており、「命令に従っただけ」という描き方はどうかと思った。
  • 歴史は繰り返す〜斉藤光政『偽書「東日流外三郡誌」事件』 - Commentarius Saevus

    斉藤光政『偽書「東日流外三郡誌」事件』(新人物往来社、2010)を読んだ。ニセ歴史に興味ある人の間では前から有名らしいの文庫版である。 偽書「東日流外三郡誌」事件 (新人物文庫 さ 1-1)posted with amazlet at 13.09.05斉藤 光政 新人物往来社 売り上げランキング: 119,321 Amazon.co.jpで詳細を見る 著者はジャーナリストで学者ではないのだが、東奥日報の司法担当の記者だったのがふとしたことからあやしい古文書『東日流外三郡誌』関連の著作権問題訴訟を調査することになり、どんどん(いい意味で)深みにはまっていって偽書の疑いもある古文書の真贋問題に関して粘り強い取材を続けていくという話になっている。 まずはニセ歴史に関するとして面白い。今からすると、東北の歴史を覆すような内容が書いてあると言われる『東日流外三郡誌』は和田家文書というもののひとつ

    歴史は繰り返す〜斉藤光政『偽書「東日流外三郡誌」事件』 - Commentarius Saevus
    hhasegawa
    hhasegawa 2013/09/06
    「郷土に関するコンプレックス[...]につけこむニセ文書」と関連して、最近はやりの地方に定位した日本史記述の試みも結局は道州制などのイデオロギーに回収されて終わりなんじゃないの、という話をした覚えが。
  • 『風立ちぬ』〜『イングロリアス・バスターズ』の後にこんな第二次世界大戦映画を作っていいとでも思ってるの?(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    科学史鑑賞会『風立ちぬ』を見た。 id:nikubetaさん、id:kosuke64さん、 id:emeroseさんも参加。 一言で言うと『イングロリアス・バスターズ』の後にこのような第二次世界大戦ものの歴史映画を作っていいとでも思ってるんだろうかと思った。これはもちろん褒めてない。私には日のアニメーション周りのサブカルチャーとか全然わかんないし宮崎駿の作家性にもはっきり言って興味がないので、とにかくこの映画歴史ものとしてひどいなと思ったのである。 実は私は堀越二郎のことも堀辰雄のことも全く知らなくて、科学史関係者と見に行ってちょっとレクチャーしてもらって歴史的背景を知った感じなのだが、なんかまあ航空史とか全然知らなくてもこの完全に失敗したパラレル歴史叙述は何なんっていう感じだった。 まず、ドリームヴィジョンの使い方があまりにも安易というか…一応、主人公の堀越が三菱に入って軍事用の飛行

    『風立ちぬ』〜『イングロリアス・バスターズ』の後にこんな第二次世界大戦映画を作っていいとでも思ってるの?(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
    hhasegawa
    hhasegawa 2013/08/07
    「美と政治の結合」についてはカストルプ(ほぼ=トーマス・マン)が「魔の山」の下には現実=政治があると警告することで示唆されている。結末の死んだ妻の回帰は堀の小説中のリルケ「レクイエム」引用の回収では?
  • ハイリンド『ヴェローナの二紳士』〜もっと政治を!もっと権力を! - Commentarius Saevus

    吉祥寺シアターでハイリンド『ヴェローナの二紳士』を見てきた。一言で言うと、頑張ってるとは思うが私は全く面白くなかった。 まず、この戯曲は非常に困った作品…というかそもそもストーリーがちゃんとできてないし台詞もシェイクスピアの後の作品に比べると面白みが少なく、演出も難しいと思うのだが、この上演はただのハッピーエンドになっていて何それ…っていう感じ。この戯曲は主にプロテウスとジュリア、ヴァレンタインとシルヴィアという二組の恋人を中心に話が展開するのだが、プロテウスは途中でジュリアを捨てシルヴィアに横恋慕し、いろいろ悪巧みを使ってシルヴィアとヴァレンタインの仲を裂こうとする。最後、プロテウスがシルヴィアを強姦しようとしたところに最後ヴァレンタインが助けにきて、プロテウスは平謝り、それを見たヴァレンタインがプロテウスを許して突然シルヴィアをプロテウスに譲るとか言い出す…という驚愕の展開があるのだが

    ハイリンド『ヴェローナの二紳士』〜もっと政治を!もっと権力を! - Commentarius Saevus
    hhasegawa
    hhasegawa 2013/07/17
    「日本に帰ってきてから二回シェイクスピア見たんだけど、どちらもあまりにも非政治的で既にうんざりしてきた」「脱政治化」を好む傾向は万国共通とはいえ、日本で特に顕著に見えるのはどういうわけか。近世の遺産?
  • ナショナルシアター『アテネのタイモン』〜I predict a riot!オキュパイvs資本 - Commentarius Saevus

    ナショナルシアターで『アテネのタイモン』を見てきた。これ、シェイクスピアの中でも私が二番目くらいに低評価な戯曲だったのだが、公演を見て全く意見が変わった。これはミドルトンか誰かとの共作であろうと言われていて、都市喜劇ふうの(ミドルトンふうとも言えるかも)設定にシェイクスピアふうの悲劇的人物がいきなり現れるギャップがなんか私はあまり好きじゃなかったのだが、この公演を見てこれってこんなに面白い戯曲だったんだ…と思った。この芝居を褒めたマルクスは正しい。 ナショナルシアターの公演はたいていそうなのだが、ニコラス・ハイトナー演出のこのプロダクションもすごいモダナイズしてあって、話は美術館かなんかにTimon Roomという部屋ができる時のセレモニーみたいな場面から始まる(これだけで「オッ」と目を引かれる)。タイモンはスーツを着た芸術パトロンだし、タイモンの友だち面をしておきながらあとでタイモンが困

    ナショナルシアター『アテネのタイモン』〜I predict a riot!オキュパイvs資本 - Commentarius Saevus
    hhasegawa
    hhasegawa 2012/08/24
    昨今の資本に対する運動・暴動場面を導入した、『経哲草稿』で(のみ?)お馴染の『アテネのタイモン』新演出。直接行動する群衆がアルキビアデスのような煽動政治家に率いられる様相が現代の諸事情を連想させる。
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