今回は、個別企業の戦略行動を考えてみたい。ケーススタディとしては、デジタルコンテンツ配信ビジネスを開始した企業の戦略行動を考えることにする。具体的に戦略オプションを考えるときには、自社のとれる選択肢と競合企業がとることのできる選択肢の双方を考えないようであれば厳しい競争には勝てないであろう。このような関係のときに、役に立つ考え方がゲーム理論である。これは、F・ノイマンとO・モルゲンシュテルンが「ゲームの理論と経済行動」(1944年)の中で最初に提唱したもので、20世紀におけるもっとも優れた経済理論のひとつと評されている。 ただし、ゲームと一口にいっても、経営における戦略ゲームといわゆる普通のゲームとはその本質が異なる。その異なる点もいろいろあるが、ここでは勝負のつけ方に注目する。たとえば、スポーツは、一定の厳格なルールのもとで勝者と敗者を決定することである。これに対して、経営におけるそれは