【モスクワ=遠藤良介】ロシアのプーチン政権が乗り出した学校用の統一歴史教科書づくりで、その指針として専門家らの策定した指導要領が論議を呼んでいる。「愛国心」の養成を歴史教育の眼目と位置づける同要領が、過去の独裁者や戦争を肯定的にとらえているためだ。膨大な人的犠牲といった歴史の暗部を矮小(わいしょう)化する姿勢には「人や社会を軽視した国家至上主義が鮮明だ」との批判が強く、現政権による自己正当化の思惑が垣間見える。 プーチン大統領に提出された指導要領(80ページ)は、新たな教科書を通じ、愛国心と国民のアイデンティティー(自己認識)、諸民族の寛容さを育むことが必要だと強調。そのために、大祖国戦争(第二次大戦の独ソ戦)などでの「偉業」や「英雄的行為」に力点を置き、諸民族がロシア国家に加わることで得た利点を重視するよう求めている。 ソ連崩壊後のロシアは共産主義に代わって国民を束ねる理念を打ち出せず、