1979年10月、独裁体制を敷いた韓国・朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が暗殺され、16年に渡る支配が突如、終焉を迎えた。これで時代が変わるだろうと、民主化を求める市民たちは湧き立つ。ところが、ほどなくして全斗煥(チョン・ドゥファン)らがクーデターを起こし、軍部独裁体制は維持された。1980年5月、光州では、抗議の声をあげる市民たちが、軍による激しい弾圧を受けた。この「光州事件」(5.18民主化運動)は往々にして「男性たちの物語」として語られるが、女性たちの役割はただ「後方支援」や「補助」だったのだろうか。軍事政権と家父長制の狭間で光が当てられてこなかったものとは何か? 現地取材を通して探る。 梅雨明け間際の空は昼間でもやや薄暗く、吹き抜ける風はどこか雨の香りを宿していた。ビルの8階まで昇ると、カフェの併設された開放的な空間が広がっている。大きな窓からは、光州の中心地から彼方の山の稜線までが