翁邦夫さんは、『人の心に働きかける経済政策』で、黒田日銀による期待に働きかける異次元緩和のロジックを完膚なきまでに論破しているが、やや虚しさを覚える。それは建て前に過ぎず、公言できない真の目的は円安と株高を呼び込むことにあって、これには成功したと言えるからだ。もっとも、狙った輸出の拡大は期待した程ではなく、消費増税の破壊力を軽く見たために、物価の2%目標は夢と消えたわけであるが。 ……… 金融緩和が設備投資に効かないことは、ケインズの昔から実証されていて、金利が設備投資を最適化するのは、教科書の上だけである。実際に効くのは、為替と資産に対してだ。すなわち、自国通貨安で輸出が伸び、住宅や建設投資が増し、それらが生み出す需要が設備投資を引き出していく。設備投資は間接的に動かされるものであって、期待は需要の動向で形成される。最適化に向わない不合理な行動になるけれども、これが現実だ。 法人企業統計
