アーム筆入の生みの親であり、サンスター文具の現社長でもある伊藤幸信さん。子供の頃から機械や工作が大好きだったという。 子供の頃使っていた文房具で、最も思い入れの強いものは何だろう。鉛筆? 消しゴム? それともノート? 人によってさまざまだろうが、多くの人は「筆入れ(筆箱)」と答えるのではないだろうか。昔の小学生にとって、文房具は単なる実用の道具ではなかった。キャラクターが描かれた鉛筆や消しゴムは、玩具と同じくらい大切なもの。それを入れる筆入れは、中身以上にカッコよくて友達に自慢できるものでなければならなかった。そう、子供たちにとって筆入れは、夢がいっぱい詰まった宝箱のような存在だったのである。 戦後間もない頃の小学生なら、セルロイド製の筆入れを使っていたことだろう。昭和30年代の小学生なら、プラスチックの箱形筆入れを使っていたかもしれない。スナップ式やボタン留めのビニール製箱形筆入れや、表