ただいま話題のあのニュースや流行の出来事を、毎月3冊の関連本を選んで論じます。書評として読んでもよし、時評として読んでもよし。「本を読まないと分からないことがある」ことがよく分かる、目から鱗がはらはら落ちます。PR誌「ちくま」2024年8月号より転載。 6月19日、「こども性暴力防止法」が国会で可決成立した。この法律には、仕事で子どもと接する人(教師や保育士など。採用希望者を含む)について、事業者に性犯罪歴の確認を義務づける新制度(日本版DBS)が盛り込まれている。 実効性に疑問がある(不起訴事案および塾やスポーツクラブなどの民間事業は対象外)、人権侵害のおそれがある(職業の自由を制限する、更生への意欲を削ぐ、前科情報が流出する危険性がある)など、問題点も多々指摘されている法律だが、社会全体で子どもを性犯罪から守るという主旨自体は頷ける。 しかしながら、犯罪を未然に防ぐには、加害者の摘発や