エレホン国はどこにある? このところ、昔の本をいくつか読みました。300年前に書かれたモンテスキューの『ペルシア人の手紙』。100年前に書かれたバージニア・ウルフの『ダロウェイ夫人』。そしてこのたび読んだのが、150年前に書かれたサミュエル・バトラーの『エレホン』です。共通点は、いずれも初訳ではなく新訳だということ。現代の読者のために、われわれに伝わりやすい言葉でよみがえった作品、と言えるかと思います。 この3冊のうち、とりわけバトラーの『エレホン』は、SFのはしりとも言われるらしいのですが、奇妙な力で現代人の心に波を立て、脳みそに負荷をかける、特異な作品だと思いました。そこでこの作品の不思議さについて、私なりに少し書いてみたいと思います。 そもそも「エレホン」というタイトルですが、綴りは Erewhon 。英語のnowhere を、(ほぼ)逆から綴った言葉です。そう、それは「どこでもない