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井上達夫の検索結果1 - 40 件 / 42件

  • 私は共産党よりも左にいるのかもしれない

    私は誰かに「表現の自由戦士ですか?」と聞かれれば、「そうですよ?」と真顔で、しかも相手のことを若干哀れみながら即答する程度には表現の自由戦士であるつもりだ。なぜ哀れむかというと、表現の自由戦士という言葉が私には「黒人と女性の選挙権戦士」と同じ感触を持って聞こえるからだ。「それ、大分昔に結論が出てて、しかもその結論に従わないと野蛮人みたいな扱いをされるはずじゃなかった?」と。このあたり、「野蛮な西洋思考から脱却してイスラムを根本に据えた政治をやれ」と言って戦っている人と思考形式としては似通っているかもしれない(主張にも方法にも同意しないが)ので、戦士と呼ばれるのもむべなるかな、と思う。 そんな私の政治的立場は、やけくそになって後藤輝樹に投票した一回の過ちを除けば、10年ほど毎回共産党に投票してきたし、だいぶ左寄りであるとは思ってきた。とは言えきょうび共産主義を目指すというのは頭がおかしいとし

      私は共産党よりも左にいるのかもしれない
    • 「叩いていい存在」を叩く行為と、ネット民の幼児性について - 道徳的動物日記

      oriza.seinendan.org 平田オリザ騒動についての雑感。 ある有名人が人の癇にさわるようなことを言う。わたし自身としてもその発言を見聞して不愉快な気持ちになり、身内との会話でその話題を出して文句を言ったり愚痴ったりすることもあれば、SNSにネガティブな意見を書き込むこともある。 とはいえ、その人物を批判して糾弾することがネット上の潮流となっていることを知れば、自分からわざわざその人物を批判することはほとんどない。すでに他人が言ったり書いたりしていることを再生産することは意味のないことであるからだ。他の人たちが書いている意見がわたしのものとは異なっていて、自分の抱いている意見や感情がまだ誰にも代弁されていないな、と思ったら自分から表現する場合もあるけれど。 しかし、ある人がネット上で「パブリックエネミー」と扱われはじめて、その人に対する批判意見なら何を言ってもいいという段階にな

        「叩いていい存在」を叩く行為と、ネット民の幼児性について - 道徳的動物日記
      • ポピュリズムやパリテに抱く「リベラル」派の幻想 - 石川智也|論座アーカイブ

        ポピュリズムやパリテに抱く「リベラル」派の幻想 井上達夫インタビュー(上)/「リベラル」な人々へ 石川智也 朝日新聞記者 ブレグジットBrexitの混迷のトンネルからいまだ抜け出せない英国で、「第二のトランプ」が新首相に選出され、またぞろ右派ポピュリズムの隆盛がしきりに論じられている。 ユーラシア逆端のこなたでは、先般の参院選期間中、「消費税廃止」に「奨学金チャラ」などと左派ポピュリズム的政策を訴えた「れいわ新選組」が熱狂的支持を集めたが、主要メディアは黙殺。「改憲勢力」の議席が焦点かのような報道が政治的言説空間を覆った。 ブレグジットと改憲にまつわるメディアの報道には知的倒錯があり、その根っこには憲法9条問題がある、と論じるのが法哲学者の井上達夫・東大大学院教授だ。 「正義」という概念をもとに、リベラリズムの立場から右も左も舌鋒鋭く批判してきたが、特にゆがんだレンズでものを見ているのは護

          ポピュリズムやパリテに抱く「リベラル」派の幻想 - 石川智也|論座アーカイブ
        • 五輪とコロナ、為政者は「答責性」自覚せよ 井上達夫氏:朝日新聞デジタル

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            五輪とコロナ、為政者は「答責性」自覚せよ 井上達夫氏:朝日新聞デジタル
          • 「夜の街」の憲法論―飲食店は自粛要請に従うべきなのか

            「経済的自由」は「精神的自由」より劣るのか ところで、スナックをはじめとする飲食店に対して、この間、当たり前のように行なわれている「時短」や「休業」要請などの営業規制は、いったい何を根拠として行なわれているのだろうか。 そのことを考えるにあたって、かつて憲法学と法哲学の間で行なわれた「二重の基準」論争を振り返ってみたい。 憲法学においては、営業の自由を含む「経済的自由」の公権力による規制は、表現の自由などの「精神的自由」の規制よりも緩やかな司法審査に服すこととなっており、このように規制対象によって基準が二重になっていることを指して「二重の基準」と呼んできた。 噛み砕いて言うなら、「営業の自由」は「表現の自由」や「報道の自由」などに比べると、簡単に政府による規制の対象となってしまうのである。このようなかたちで経済的自由を精神的自由に対して劣位に置くのは、「知識人」特有の偏見なのではないかと法

              「夜の街」の憲法論―飲食店は自粛要請に従うべきなのか
            • 【読書感想】リベラリズムの終わり その限界と未来 ☆☆☆☆ - 琥珀色の戯言

              リベラリズムの終わり その限界と未来 (幻冬舎新書) 作者:萱野 稔人出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2019/11/28メディア: 新書 Kindle版もあります。 リベラリズムの終わり その限界と未来 (幻冬舎新書) 作者:萱野稔人出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2019/11/27メディア: Kindle版 内容(「BOOK」データベースより) 自由を尊重し、富の再分配を目指すリベラリズムが世界中で嫌われている。米国のトランプ現象、欧州の極右政権台頭、日本の右傾化はその象徴だ。リベラル派は、国民の知的劣化に原因を求めるが、リベラリズムには、機能不全に陥らざるをえない思想的限界がある。これまで過大評価されすぎていたのだ。リベラリズムを適用できない現代社会の実状を哲学的に考察。注目の哲学者がリベラリズムを根底から覆す。 社会が「右傾化」し、リベラリズムが危機に瀕している…… そう

                【読書感想】リベラリズムの終わり その限界と未来 ☆☆☆☆ - 琥珀色の戯言
              • 特集ワイド:この国はどこへ これだけは言いたい 安全保障、国民が立たなければ 法哲学者・東京大名誉教授 井上達夫さん | 毎日新聞

                ロシア軍のウクライナ侵攻から1カ月あまり。いまだ出口は見えない一方で、今回の事態は、自国をどう守るのかという問いを日本にも突きつけている。 「我々がウクライナから学ぶべきは、国が侵略された時、その国民が本気で戦おうとしない限り誰も助けてくれないこと、なんですよ。代わりに戦ってもらおうなんて甘いです」。法哲学者で東京大名誉教授の井上達夫さん(67)は、厳しい口調でこう切り出した。憲法9条を中心に安全保障の問題をかねて提起してきた井上さんには、この間の国内での反応にいらだちを覚えずにはいられないという。 「ウクライナで起きたことが人ごとじゃなくて『自分ごと』なんだと本当に日本人が思っているとは思えないんだよね。ウクライナは降参すべきだとか、右派も左派も言っているでしょ。なぜロシアに非があるのにウクライナに責任転換するのか。ウクライナが降伏してごらんなさいよ、間違いなく…

                  特集ワイド:この国はどこへ これだけは言いたい 安全保障、国民が立たなければ 法哲学者・東京大名誉教授 井上達夫さん | 毎日新聞
                • 「法律時報」8月号コロナ特集 短評|ショーンKY

                  新型コロナウイルス感染症COVID-19についての情報をお求めの方は、厚生労働省の情報ページか専門家の情報をフォローしてください。私は専門家を紹介する立場にはありませんが、個人的なフォロー推奨リストを参考にしていただけますと幸いです。 筆者は医療や行政法の専門家ではありません。単なる素人の感想なので医療情報としての信頼は置かないでください。基本的に自分が納得するためだけに書いたものであり、他者を納得させるために書いたものではありません。 もし法クラの方が読んでいたら、私が具体的に議論したいのはこういう法案や既存法だ、というのはこちらをご参照ください。 井上達夫 ❌ 内容の7割が独自の防疫論で、法律と関係がない。 ❌ 肝心の専門部分すら間違っている。「新型インフルエンザ等」の「等」はワイルドカードだから新型コロナも適用できたはずだなどと主張しているが、この「等」は再興型インフルエンザしか指さ

                    「法律時報」8月号コロナ特集 短評|ショーンKY
                  • モラルを捨てたら儲かるか?『不道徳な経済学』読書会【闇の自己啓発会】|ひでシス

                    闇の自己啓発会は4月25日、『不道徳な経済学』読書会を行いました。初の完全リモート読書会ということで、当初は「いつものように話せるのか?」との懸念がありましたが、やってみると普段と同じ感覚で話すことができました。今回は、コロナ自粛中に考えたこと、ネオリベラリズム、コミュニティについてなど、色々な話題が展開。その模様を紹介していきます! ■参加者一覧役所【暁】 編集者。外出自粛中にしているゲームは、プチデポット『グノーシア』。 【木澤】佐登志 文筆家。外出自粛中に見ているアニメは『ミッドナイトゴスペル』。 【江永】泉。外出自粛中にプレイ動画を視聴したホラーゲームは『GO HOME』。 【ひで】ひでシス。外出自粛中に作ったWebアプリは Magwatta ■外出自粛中、どう過ごしていますか?【ひで】 皆さん、コロナ自粛はどうですか? う〜ん、僕は自分のことを引きこもりって思ってはいましたが、こ

                      モラルを捨てたら儲かるか?『不道徳な経済学』読書会【闇の自己啓発会】|ひでシス
                    • 195 沈黙のおっさんシリーズ【沈黙の戦艦】ほか - 週末息子と見る映画

                      いらっしゃいませ。 本日はお忙しい中【週末息子と見る映画】に遊びに来て下さり ありがとうございます。 5児の父大阪住んでましてんことセガール08です。 前回のブログでお星さまをくれた方、ブクメ及びコメントを下さった方々… ホントありがとうございます また皆さんのブログにもできるだけ寄らせてもらいますね。 なかなか行けなくて申し訳ありません。 尚…PCでしか分かりませんがデザインの変更に伴いサイドバーで私がお世話になってる私がオススメの映画のブログを載せてますので良かったらそちらもどうぞ~!! 又 懐かしの映画のチラシやパンフレットを載せている自己満足爆発なブログ【08映画缶】も宜しくでぇ~す! 08eigakan.hatenablog.jp 【ブレイド2】を見ようと思ったら無料放送が終わってて ガビビ~ンな気持ちになったんすよ… なぁ〜にぃ〜っ! やっちまったなぁっ! 男は黙って健さんの作

                        195 沈黙のおっさんシリーズ【沈黙の戦艦】ほか - 週末息子と見る映画
                      • 薬物を使ってみて思ったこと

                        つい先ごろ、薬物の利用をした。以下で具体的にどの薬物をどう利用したかを書くことはない。また、その瞬間における体験がどのようなものであったかについても書くつもりはない。私が書くのは、翌日以降に残った薬物の影響と、そこから感じた「政治」についてだ。 「それ」からしばらく経ってから、PCチェアでうたた寝した。それ自体はしばしばあることなのだが、ある夢の最中で「これは夢ではないか?」と思い、そこに居合わせた人に自分の頬をつねってもらうように頼んだ。痛みを感じたので無事夢ではないことがわかったのだが、それは結局夢であることをPCディスプレイを目の前にして知ることになる。 それ以降はいわゆる「金縛り」状態を2~3回ほど繰り返した。自分がPCデスクの前に座っていることは分かっていて、半分夢の中にいるせいで体が動かないことも分かっているのだが、何もなすすべが無いのである。何度起きようと試みても無駄だった。

                          薬物を使ってみて思ったこと
                        • 安倍能成をダシにして日本における保守とかリベラルとかを考えてみる/高田里惠子 - SYNODOS

                          安倍能成という名前を題に入れてしまいましたが、いまの若い世代にはほとんどなじみがない人だと思います。明治16(1883)年に生まれて、昭和41(1966)年に亡くなった方です。あ、安倍晋三の親戚ではありません。でも、アベにはいろいろな漢字があって迷うところを晋三サンのおかげで、このアベがメジャーになったような気もします。安倍能成によりますと、「アンバイ」と書く安倍、と説明するそうですが、これは夏目漱石の妻、鏡子の発案によるものです。漱石の「修善寺の大患」(1910)のおり、師の危篤を聞きつけて最初に修善寺に到着したのが安倍で、鏡子は、これで大丈夫だ、縁起がいい、「あんばい(塩梅)よ(能)く成る」だ、と喜んだとか。この逸話からわかりますように、安倍能成は、小宮豊隆、鈴木三重吉、森田草平と並んで、漱石門下の四天王と呼ばれました。 もう一つの呼び方は「セカンド・アベ」です。これは、安倍が東京帝国

                            安倍能成をダシにして日本における保守とかリベラルとかを考えてみる/高田里惠子 - SYNODOS
                          • はてなで政治を語るなら読んでおきたい必読書100選

                            anond:20210210225201 「100選」って書いたけど、多分50冊もないわ。トラバやブコメで埋めてくれ。順番とかは重要度とかではなくて、単に思いついた順。 外国人著者スティーブン・ピンカー 『暴力の人類史』 スティーブン・ピンカー 『21世紀の啓蒙』 ジョナサン・ハイト 『社会はなぜ左と右に分かれるのか』 チャールズ・マレー 『階級「断絶」社会アメリカ』 タイラー・コーエン 『大停滞』 ピーター・ターチン 『国家興亡の方程式』 ブルース・シュナイアー 『信頼と裏切りの社会』 デヴィット・グレーバー 『民主主義の非西洋起源について』 ロビン・ハンソン、ケヴィン・シムラー 『人が自分をだます理由』 マイク・サヴィジ 『7つの階級』 ゼイナップ・トゥフェックチー 『ツイッターと催涙ガス』 A.R.ホックシールド 『壁の向こうの住人たち』 ダグラス・マレー 『西洋の自死』 ティム・ウ

                              はてなで政治を語るなら読んでおきたい必読書100選
                            • 日本の「リベラル」は共産主義者である | リベラルとは

                              「リベラル」とは左翼と呼ばれたくない人たちの自称  2017年10月に行われた第48回 衆議院議員総選挙の選挙特番で、司会者の池上彰氏が、「【リベラル】とは、左翼と呼ばれたくない人たちの自称」だと紹介したことが話題を呼びました。 近年、よく耳にするようになった「リベラル」という言葉ですが、ここでは日本の「リベラル」の“正体”について確認してみたいと思います。 その前に、そもそも「リベラル」(liberal)とは「自由主義者」などと訳されますが、冒頭での池上氏の指摘のように、日本では「左翼」や「革新派」といった意味合いで使われているのが実情です。 「日本を代表する法哲学者で、リベラリズム論の第一人者」と呼ばれる井上達夫氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授)も、「マルキシズムをはじめとする社会主義思想が崩壊してしまったので、メディアが反保守勢力の新名称として『リベラル』という言葉を使うように

                                日本の「リベラル」は共産主義者である | リベラルとは
                              • 「同性婚を認めるなら近親婚も認めろ」を「論破」するのは難しい。 - いつか電池がきれるまで

                                www.asahi.com この記事に関しては、世界の潮流や日本の最近の世論調査などをみると、岸田総理の言葉は「時勢に合わない」と感じる一方で、この場では、国のトップとして慎重な姿勢をとった、とも思われます。じゃあ早速法制化しましょう、認めましょう、と簡単には言えない立場ではありますよね。そう口に出してしまえば、さまざまな実務が立法や行政の現場では生じてくるわけですし。 いつまで日本政府は、その「慎重な立場」でお茶を濁しているんだ、と苛立っている人がいるというのも想像はできます。 『はてな匿名ダイアリー』でも、同性婚についてのエントリが注目されているのです。 anond.hatelabo.jp anond.hatelabo.jp 僕は同性愛者ではありませんが、同性婚には賛成です、というか、反対する理由がない。 正直なところ、結婚制度というもの自体が、もう時代遅れになってきているような気もし

                                  「同性婚を認めるなら近親婚も認めろ」を「論破」するのは難しい。 - いつか電池がきれるまで
                                • 隠された大きな前提を見逃さず、顕在化させる法哲学 | 研究室訪問 | 一橋大学 HQウェブマガジン

                                  安藤 馨(あんどう・かおる) 2004年東京大学法学部卒業。2006年同大学院法学政治学研究科修士課程修了。専攻は法哲学・道徳哲学。2006年から同研究科助手・助教を経て、2010年 神戸大学大学院法学研究科准教授、2020年 同教授。2021年より現職。著作に『統治と功利』(勁草書房)『法哲学と法哲学の対話』(有斐閣、大屋雄裕と共著)など。 原理に遡ったうえで幅広い分野にアプローチする研究スタイル 私の専門である法哲学には、「悪しき法にも従うべき道徳的義務はあるか?」という有名な問いがあります。 この問いに答えるためには、まず「悪し、とは何か?」を理解するために、道徳哲学や倫理学に遡る必要があります。すると今度は「そもそも道徳とは何か?」を問うメタ倫理学に遡らざるを得なくなる。さらに「世界には道徳が存在するのか?」という形而上学へ。そして「正しい、良いと言うとき、私たちは何をコミュニケー

                                  • 日本人は憲法をどう見てきたか?【境家史郎】【前田健太郎】

                                    『公研』2018年2月号「対話」 境家 史郎・東京大学法学部准教授×前田 健太郎・東京大学大学院法学政治学研究科准教授 憲法改正議論が本格的に始まろうとしている。そもそも日本人は憲法をどのように見ていたのだろうか。 各年代の世論調査を辿ることで、その実像に迫る。 憲法九条をめぐる「神話」 前田 境家さんは昨年(2017年)、『憲法と世論』を出版されました。境家さんと言えば、統計分析を用いて人間の政治への関わり方を捉える「政治行動論」と呼ばれる分野を引っ張ってきた、政治学の先端におられる研究者のお一人です。その方が憲法問題という現在進行形の政治争点に直接踏み込むような著作を発表されたことは、同業者には驚きを持って迎えられたと思います。今日はこの『憲法と世論』に沿って、戦後の各年代で「日本人は憲法をどう見てきたのか」を振り返りながら議論を進めていきたいと思います。そもそもなぜ憲法と世論というテ

                                      日本人は憲法をどう見てきたか?【境家史郎】【前田健太郎】
                                    • 左翼は「盛り」を過ぎた

                                      米英での左翼の退潮 英経済紙フィナンシャル・タイムスのコラムニスト、ジャナン・ガネシュ氏が「文化的左翼はピークを過ぎた」(The cultural left has peaked)という記事を3月1日に掲載していた。 要約すると、内容は次の通りだ。今振り返ると2020年をピークにして、米英ではリベラルと称する左翼の政治的運動の影響力が減っている。バイデン政権も民主党左派の政策を積極的に取り上げない。人権の過剰擁護が社会で批判を受けている。空気が変化している。経済の厳しさが影響しているのだろう。左翼が消えることはないが、存在感が小さくなっている。左翼は嫌われている。しかし今のままでは、嫌われることよりも悪い「からかいの対象」になるかもしれない。 かっちりした文章ではなく印象を羅列しており、ガネシュ氏のいつもの文章より反響は小さい。しかし「そんな感じがする」という意見がネットで散見される。私も

                                        左翼は「盛り」を過ぎた
                                      • 「将来を適切に切り分けること ――エーデルマンの再生産的未来主義批判を念頭に」『現代思想』2019年9月号 - tkira26's diary

                                        本稿は『現代思想』2019年9月号に執筆した論文の転載である(許可済)。掲載時のままであり、修正は行っていない。ただし、ブログの仕様上、ルビの削除など、表記に若干の変更が生じた箇所がある。 1. はじめに:将来は必要か? 私たちは次世代を生み育てなければならないのか。もしかしたらその必要はないのではないか。だとすると、将来世代との規範的関係をめぐる議論はどのように変わるだろうか。本稿はこの問いを念頭に置きながら、いまだ生まれざる将来世代との関係における「世代間正義(intergenerational justice)」論を考察する。 世代間正義論の基本的な問題設定は、私たち現在世代はいまだ存在せざる将来世代(ときにもはや存在しない過去世代)に対し、いかなる正義の関係にありうるか、というものである。地球環境問題が切迫したものとして叫ばれ始めた1960年代以降、この問題は日増しに強まる実践的重

                                          「将来を適切に切り分けること ――エーデルマンの再生産的未来主義批判を念頭に」『現代思想』2019年9月号 - tkira26's diary
                                        • 「失政を修正していく責任が自分たちにある」井上達夫教授 退職記念インタビュー【前編】 - 東大新聞オンライン

                                          東大で30年近く法哲学研究に携わり、正義論から憲法改正論まで幅広く独自の議論を展開してきた井上達夫教授のロングインタビューを2回に分けてお届けする。前編では、今年度で東大を退職される井上教授に、自身の研究理念や哲学観、学生へのメッセージなどについて聞いた。 (取材・円光門、撮影・山口岳大) 後編はこちら 井上 達夫(いのうえ・たつお)教授(法学政治学研究科) 77年法学部卒業。東大助手、千葉大学助教授などを経て91年に東京大学助教授に転任、95年より現職。近著に『立憲主義という企て』(東京大学出版会)、『生ける世界の法と哲学――ある反時代的精神の履歴書』(信山社)など。 ――2020年に出版された『生ける世界の法と哲学――ある反時代的精神の履歴書』では小学生時代に自身が体験した貧困や家庭崩壊についての記述があります。この体験は先生の法哲学研究にどのような影響を与えましたか 私が東大に入学し

                                            「失政を修正していく責任が自分たちにある」井上達夫教授 退職記念インタビュー【前編】 - 東大新聞オンライン
                                          • 女性専用車両やレディースデイは男性差別か? - 京太郎のブログ

                                            0.はじめに この記事では、男性差別のような逆差別と呼ばれるものについて考え検討する。 前回までの記事で差別はなぜ悪質かについて見てきたが、今回男性差別のような逆差別について考えるのは、「逆差別を無視している」というよくある批判に答えるためだ。 そしてそのためにはそもそも逆差別とは何かについて検討が必要なのだ。 逆差別の問題として頻繁に取り扱われるのは女性差別に対する男性差別だろう。 男性差別と言われるような事例としてはよく以下の二つが挙げられる。 ・女性専用車両 ・レディースデイ この記事では議論の訴状に挙がることの多い男性差別を例に逆差別について考えていきたい。 1.男性専用車両がないのは差別か? 差別は基本的にはマイノリティや相対的な弱者の立場にいる人間に対して起こるものと考えられる。 差別の議論においては「誰が」「どのような立場にいる人間に対して行うのか」という二点が重要になってく

                                              女性専用車両やレディースデイは男性差別か? - 京太郎のブログ
                                            • 【読書感想】リベラルとは何か-17世紀の自由主義から現代日本まで ☆☆☆☆☆ - 琥珀色の戯言

                                              リベラルとは何か-17世紀の自由主義から現代日本まで (中公新書) 作者:田中 拓道発売日: 2020/12/21メディア: 新書 Kindle版もあります。 リベラルとは何か 17世紀の自由主義から現代日本まで (中公新書) 作者:田中拓道発売日: 2021/03/12メディア: Kindle版 「すべての個人が自由に生き方を選択できるよう国家が支援するべきだ」と考えるリベラル。17世紀西ヨーロッパの自由主義を出発点として、第二次世界大戦後は先進国に共通する立場となった。しかし、1970年代以降は新自由主義や排外主義による挑戦を受け、苦境に陥っている。はたしてリベラルは生き残れるのか。具体的な政策を交えつつ、歴史的な変遷と現代の可能性を論じ、日本でリベラルが確立しない要因にも迫る。 「リベラル」について、100文字以内で説明してください、と問われたら、僕は困ってしまいます。 「リベラル」

                                                【読書感想】リベラルとは何か-17世紀の自由主義から現代日本まで ☆☆☆☆☆ - 琥珀色の戯言
                                              • 反転可能性テストとは何か?|まるがお

                                                この記事では「反転可能性テスト」を解説する。反転可能性テストを提唱し、詳細に論じたのは法哲学者の井上達夫である(井上 1999 第7章、井上 2003 第1章・第9章、井上 2008 場外補講、井上 2015 第一部)。よって、井上の議論を――私の独自の表現も用いながら――解説する。 ※ 参考文献は記事の最後に示し、本文では著者名・刊行年・ページのみを括弧に入れて表記する。 Ⅰ.反転可能性テストの趣旨 反転可能性テストとは次のことである[注1]。 【反転可能性テスト】 〈自分の他者に対する主張・要求・行動〉は〈自分と他者の立場が反転しても受容できる理由〉によって正当化できるかどうかを吟味すること。 このテストをパスしない主張・要求・行動は正義に反することになる。以下では、3つの要点を解説していこう[注2]。 第1に、「反転」について。〈自分と他者の立場が反転する〉とは〈自分が他者の身になる

                                                  反転可能性テストとは何か?|まるがお
                                                • 小沢一郎「絶対次の総選挙の後は我々の政権だよ」の根拠 - 佐藤章|論座アーカイブ

                                                  小沢一郎「絶対次の総選挙の後は我々の政権だよ」の根拠 佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長 筆者が論座で連載した「小沢一郎戦記」を加筆・再構成した『職業政治家 小沢一郎』が朝日新聞出版から出版されました。折しも新立憲民主党が誕生し、一方の自民党の方も菅総裁・首相体制が事実上固まりました。「解散・総選挙近し」の声も多く、政界は一気にポスト安倍の風向きを強めています。 日本の政治はどこから来て、どこへ向かうのか? その決定的な道標のひとつとなるのが、この本の役割です。(ジャーナリスト 佐藤章) 新しくスタートする立憲民主党の結党大会が9月15日に開かれる。新党結成に尽力した小沢一郎氏にとって3度目の「政権交代」の戦いが始まる。いや、この言い方は正確ではない。小沢氏の戦いは常に継続しているのだ。 「永年在職議員特別表彰」の先送り 昨年10月、安倍内閣が消費税の税率

                                                    小沢一郎「絶対次の総選挙の後は我々の政権だよ」の根拠 - 佐藤章|論座アーカイブ
                                                  • LGBT法案の修正は本当に大団円なのか

                                                    社会・一般The Dictionary definition of the word “discrimination” photo taken through magnifying glass from a page of a dictionary with selective focus. LGBT法案についての与野党協議を行っていた超党派の「LGBTに関する課題を考える議員連盟」は、野党からの強い要望で基本理念に「差別は許されない」という文言を入れる修正を行ったと発表した。理不尽な差別を認めてはならないのは当然のことだが、筆者が心配するのは、しばしば「何をもって差別とするのか」という議論さえも差別だと断定するリベラルメディアの姿勢にお墨付きを与えてしまうのではないかという点だ。 そのことを痛切に感じたのは、2018年に起こった『新潮45』廃刊騒動においてだった。これを報じる既存マスコミ

                                                      LGBT法案の修正は本当に大団円なのか
                                                    • 日本の「禁煙法」はどうなのだろうか? - 関内関外日記

                                                      寄稿いたしました。 blog.tinect.jp イギリスの「禁煙法」について、最近興味をもっている倫理学の立場からどんなんだろう、みたいな話です。 そのあと、こんな本を読みました。 タバコ吸ってもいいですか ― 喫煙規制と自由の相剋 (法と哲学新書) 作者:児玉 聡,奥田 太郎,後藤 励,亀本 洋,井上 達夫 信山社 Amazon 「受動規制と自由の相克」ときたもんだ。児玉聡先生の部分はだいたいおれがさきに読んだものと同じ。 で、ほかの人の意見で、法哲学からの見方についてメモしておく。 現在、日本には「禁煙法」はない。イギリスみたいなやつは。ただ、改正健康増進法とたとえば東京都受動喫煙防止条例とかがたばこを規制している。 これについて、井上達夫先生がこんなことを述べていた。 井上達夫 - Wikipedia J.S.ミルの危害原則について、危害自体の排除を求めているわけではなく、諸個人に

                                                        日本の「禁煙法」はどうなのだろうか? - 関内関外日記
                                                      • 日本社会にとってコロナ禍とは何か|宮田裕章 | 遅いインターネット

                                                        医療政策とデータサイエンスの連携から「市場外」の社会課題を考える ──これまで「遅いインターネット」ではこのコロナ禍に対して、パンデミックそのものよりもこの問題によって顕在化した都市やライフスタイルの問題について考えてきました。 この数ヶ月、世界の主要都市が次々と封鎖され、グローバルなメガシティ化の影で見過ごされてきた問題が明らかになりました。それは同時に、人々が当たり前だと思っていた働き方や住まい方を、足元から見つめ直す機会でもあったと思います。これから先の「都市」は、どんなふうに変わっていくべきなのか。ちょっと大きな問いですが、建築家の門脇さん、ライゾマの齋藤さんと一緒に、考え始めていくことにしました。 茂木健一郎さんと、久々にじっくり話しました。(そんなつもりはなかったけど)結果的にコロナ禍の時代とシンクロしてしまった『遅いインターネット』の脳科学的な掘り下げを出発点に、身体と情報の

                                                          日本社会にとってコロナ禍とは何か|宮田裕章 | 遅いインターネット
                                                        • アメリカにもある「Colabo問題」 「道徳的ゆすり」と政治の歪曲|柿生隠者(かきお・いんじゃ)

                                                          スキルのない文系大卒が「道徳的ゆすり屋」になった 数日前に書いた「colaboとマスコミの『脅し文句』ビジネス」に、brothert354という方がコメントを入れてくれて、「ルンペンブルジョアジー」という言葉を教えてくれた。 「ルンペンブルジョアジー」とは、米国のジャーナリスト、レイトン・ウッドハウス(Leighton Woodhouse)氏が提唱する概念だ。 その意味は、ウッドハウスの論説を訳出したtarafuku10氏によれば、以下のようになる。(以下、太字は引用) 「ルンペンブルジョワジー」とは、ここでは生産性は低いが高給と社会的尊敬を得られる職についている大卒社会人ぐらいの意味。労働市場での競争で明確に有利となるスキルを持たない主に人文系の卒業生が各産業に入り込み、大学で吹き込まれた道徳的資本を頼みの綱にしてキャリアを築こうとする。その過程で社会がWoke化していった ざっと、以下

                                                            アメリカにもある「Colabo問題」 「道徳的ゆすり」と政治の歪曲|柿生隠者(かきお・いんじゃ)
                                                          • 五輪、危うい政治の願望思考 井上達夫・東大名誉教授に聞く:朝日新聞デジタル

                                                            ","naka5":"<!-- BFF501 PC記事下(中⑤企画)パーツ=1541 -->","naka6":"<!-- BFF486 PC記事下(中⑥デジ編)パーツ=8826 --><!-- /news/esi/ichikiji/c6/default.htm -->","naka6Sp":"<!-- BFF3053 SP記事下(中⑥デジ編)パーツ=8826 -->","adcreative72":"<!-- BFF920 広告枠)ADCREATIVE-72 こんな特集も -->\n<!-- Ad BGN -->\n<!-- dfptag PC誘導枠5行 ★ここから -->\n<div class=\"p_infeed_list_wrapper\" id=\"p_infeed_list1\">\n <div class=\"p_infeed_list\">\n <div class=\"

                                                              五輪、危うい政治の願望思考 井上達夫・東大名誉教授に聞く:朝日新聞デジタル
                                                            • 井上達夫教授は、いつからこういう方になったのか

                                                              私がまだ修士課程の大学院生だった頃、井上教授に、早稲田で開かれた研究会に来ていただいたことがある。私が23歳頃の1992年頃だ。非常に力強くも落ちづいた報告と受け答えに、感銘を受けた。 井上教授は、30歳代前半でサントリー学芸賞を受賞され、名声を確立されていた。自信に裏付けられた静かな凄みに、新進気鋭の若手学者とは、こういう方のことか、と胸に残った。 その時から比べると、井上教授は、変わってしまった。60歳代半ばで、もう怖くて誰も何も言えない存在だ。すっかり、いつも怒って説教をしている人、になってしまった。 井上教授は、「修正的護憲派」・「原理的護憲派」と呼ぶ人々を批判し続ける。だがその批判の根拠は、何やら特殊な倫理的な姿勢を問うものだ。「欺瞞的」といった言葉を、繰り返し繰り返し、他者の糾弾のために使う。 木村草太・首都大学東京教授への糾弾の例をとろう。「私の授業を聴いていた元学生」の「木

                                                                井上達夫教授は、いつからこういう方になったのか
                                                              • 「はるかかなた」さんのツイートが長すぎて読めなかったのでブログ上に整理しておきます - 頭の上にミカンをのせる

                                                                「リベラルがなぜ嫌われるのか?」というテーマが盛り上がっているようですが、政治哲学の分野では50年ほど前に盛り上がったことがある話題なので、簡単にご案内します。リベラルの中の人の属人的な資質の問題ではなくて、あくまでリベラルが抱える理論的な問題だからです。(1/n)— はるかかなた (@isawmydevil) 2022年11月18日 「リベラルが嫌われる理由として、リベラルの中の人の問題もさることながらリベラルが抱える理論的な問題がある」というお話です。 ここから先、取り消し線で消されてるところだけが私の感想です。 ここからスタート 「リベラルがなぜ嫌われるのか?」というテーマが盛り上がっているようですが、政治哲学の分野では50年ほど前に盛り上がったことがある話題なので、簡単にご案内します。リベラルの中の人の属人的な資質の問題ではなくて、あくまでリベラルが抱える理論的な問題だからです。今

                                                                  「はるかかなた」さんのツイートが長すぎて読めなかったのでブログ上に整理しておきます - 頭の上にミカンをのせる
                                                                • 大屋雄裕氏の「リベラル」他の用語に関する整理 - INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

                                                                  ようやく何の話か理解したんですが、①リバタリアニズムは市民の権利制限に対し常に否定的なので、緊急事態宣言のようなものに対しても反対するだろう。これはそのとおり。これはいい。— Takehiro OHYA (@takehiroohya) 2021年1月5日 ②問題はリベラルという言葉の使い方で、これは政治/法哲学的な思想としてのリベラリズムを支持している人ではなく、一定の政治的立場を示すのが(少なくとも日米英で)一般的。米の場合は≒民主党支持者で、共和党側よりはこの種の権利制限に警戒が強いかもしれないが必要なら受け入れるだろう。— Takehiro OHYA (@takehiroohya) 2021年1月5日 ③日本の「リベラル」は党派的には旧社会党~共産党で、市民の権利制限に概ね理由を問わず反対してきた立場。具体的には空港建設のための公用収用とか、ワクチンの接種強制とか。同様に公衆衛生を根

                                                                    大屋雄裕氏の「リベラル」他の用語に関する整理 - INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-
                                                                  • あとがきたちよみ/『リスクの立憲主義 権力を縛るだけでなく、生かす憲法へ』 - けいそうビブリオフィル

                                                                    あとがき、はしがき、はじめに、おわりに、解説などのページをご紹介します。気軽にページをめくる感覚で、ぜひ本の雰囲気を感じてください。目次などの概要は「書誌情報」からもご覧いただけます。 エイドリアン・ヴァーミュール 著 吉良貴之 訳 『リスクの立憲主義 権力を縛るだけでなく、生かす憲法へ』 →〈「訳者あとがき エイドリアン・ヴァーミュール:制度的キャパシティへの全体論的視点 」(pdfファイルへのリンク)〉 →〈目次・書誌情報はこちら〉 訳者あとがき エイドリアン・ヴァーミュール:制度的キャパシティへの全体論的視点 吉良貴之 本書はAdrian Vermeule, The Constitution of Risk, Cambridge University Press, 2013 の全訳である。原題を直訳すれば『リスクの憲法』であるが、既に同様のタイトルの書があることから『リスクの立憲主義

                                                                      あとがきたちよみ/『リスクの立憲主義 権力を縛るだけでなく、生かす憲法へ』 - けいそうビブリオフィル
                                                                    • 「世界は大きく多極化していく」井上達夫教授 退職記念インタビュー【後編】 - 東大新聞オンライン

                                                                      激動する国際情勢はどこへ向かうのか、日本はどう変わっていくべきなのか。東大で30年近く法哲学研究に携わり、正義論から憲法改正論まで幅広く独自の議論を展開してきた井上達夫教授に聞く。今年度で東大を退職される井上教授のロングインタビュー後編。 (取材・円光門、撮影・山口岳大) 前編はこちら 井上 達夫(いのうえ・たつお)教授(法学政治学研究科) 77年法学部卒業。東大助手、千葉大学助教授などを経て91年に東京大学助教授に転任、95年より現職。近著に『立憲主義という企て』(東京大学出版会)、『生ける世界の法と哲学――ある反時代的精神の履歴書』(信山社)など。 ━━先生は『普遍の再生』の中で、国家権力が国民の人権を保障せず統治の正統性を無視していると、最終的には統治の安定性が脅かされることになると論じました。しかし現在発達したインターネット技術を利用する中国政府の監視体制を見てみると、安定性はむし

                                                                        「世界は大きく多極化していく」井上達夫教授 退職記念インタビュー【後編】 - 東大新聞オンライン
                                                                      • 個人信用スコアの社会的意義

                                                                        総務省 学術雑誌『情報通信政策研究』 第 2 巻第 2 号 Journal of Information and Communications Policy Vol.2 No.2 Ⅰ-15 個人信用スコアの社会的意義 大屋 雄裕 1(慶應義塾大学) 要 旨 決済サービスに関する利用実績や学歴・財産などの属性によって個々人の持つ信用力 を評価し、スコアとして表示する「個人信用スコア」については、中国において普及し、 日本でもサービス展開が試みられていることから、 注目が集まっている。 本稿はその特徴 を確認したうえで個々の事業者による対応の基礎として用いられる場合にはむしろ同等 のものを同様に扱うという正義の原則にかない、反差別的なものとして評価できると判 断する一方、 その範囲を逸脱して懸念される状況について検討を加え、 その最大の問題と して国家が統一的な「社会信用システム」へと成長させ

                                                                        • 自分を知る方法とふたつの語り - 日々帳

                                                                          本当はついったーで連投しようかと思ったけど、それもそれで何だかなという気もして、ひっそりブログに書くことにした。 村本さんのnoteは他にも良い記事がある。 まえに書いたブログ。炎上芸人の人について書いたので飛び火が怖くてだいぶ丁寧な文章で書いてる。 ブックマークコメントでも書いたとおり、村本さんがまえに炎上したきっかけの朝生では、法学者の井上達夫さんにこっぴどく叱られ「君には愚民観があるね」とまで言われていたけれど、その「愚民観」について当時いろいろ読んで、とくに井上達夫さんの書かれた記事など、たいへん感服した覚えがある。 番組内でそう饒舌に語ったわけではないけれど、井上さんの、たとえば徴兵制にたいする考え方などを読むと、今回村本さんがnoteで書かれていることにつながってくる。 完全につながるわけじゃない。無知に開き直って識者が導くべきと言った村本さんに、井上さんは「愚民観がある」と指

                                                                            自分を知る方法とふたつの語り - 日々帳
                                                                          • アマゾンプライム解約運動と本をありがたがる人々[1] | The HEADLINE

                                                                            student platoon, GOODFELLOW AIR FORCE BASE, TX, US (Airman 1st Class Abbey Rieves, Public domain) , Illustration by The HEADLINE 三浦瑠麗氏(と松本人志氏)のCM出演をきっかけに、アマゾンプライム解約運動が巻き起こっている。問題の発端は、三浦氏が徴兵制の導入を主張し、安倍政権にも近いからだとされる。こうした徴兵制導入をめぐる問題の一方で、査読論文の掲載がないという三浦氏が「国際政治学者」を名乗る資格すらないといった議論も数多く目にする。本稿では、これらの問題を特に後者の問題を中心にまとめてみたいと思う。 ちなみに、筆者は、おそらく日本人で唯一徴兵制に関する計量的な実証研究の成果を報告しており[2](日本語・英語両論文は査読前だが、複数の学会等では報告済である)、学

                                                                              アマゾンプライム解約運動と本をありがたがる人々[1] | The HEADLINE
                                                                            • 法哲学の根本問題とは?――井上達夫『規範と法命題』を読む/井上達夫/橋本努(ホスト) - SYNODOS

                                                                              開催日時 2022年5月7日(土)14:00~15:30 講師 井上達夫 ホスト 橋本努 場所 Zoom【後日、アーカイブの視聴も可能です】 料金 1500円(税込) ※高校・大学・大学院生は無料です。 ロシアのウクライナ侵略は、独裁者プーチンの暴挙であります。かつて「絶対的な権力は絶対的に腐敗する」と指摘したのは、イギリスの自由主義者、アクトン卿(1834-1902)でした。絶対的な権力の腐敗を防ぐために、そして独裁者による戦争を防ぐために、私たちは自由民主主義の体制を、国際的な規模で頑丈(レジリエント)なものにしなければなりません。この問題を社会哲学の観点から捉えると、一つには、法治国家という場合の「法」をどのように捉えるべきか、という問題にいたります。 法は、法実証主義がいうように、実定法以外の規範を法的考察の対象から排除してよいのでしょうか。あるいは自然法の発想に従って、法を実質的

                                                                                法哲学の根本問題とは?――井上達夫『規範と法命題』を読む/井上達夫/橋本努(ホスト) - SYNODOS
                                                                              • ヴァーミュール『リスクの立憲主義』合評会 後編 - けいそうビブリオフィル

                                                                                2019年12月刊行、エイドリアン・ヴァーミュール(吉良貴之訳)『リスクの立憲主義 権力を縛るだけでなく、生かす憲法へ』(https://www.keisoshobo.co.jp/book/b491626.html)合評会(2020年7月開催)の記録、後編です。本書の位置づけ、憲法学の潮流等、より広く、より深くお読みいただく機会として、合評会に参加した気持ちでご一読ください。[編集部] ■現代憲法学を顧みる:岡田順太(憲法学) 1 はじめに 今回提示されたヴァーミュールの議論について、わが国の憲法学を「顧みる」契機となるという認識から若干のコメントを行う。全体的な感想やわが国の憲法学に与える示唆などを述べた後、(およそヴァーミュールが想定していない)今日的な日本の政治課題を3点取り上げて疑問点を提示する。 2 予防的立憲主義と最適化立憲主義➖顧みるツールとしてのヴァーミュール (1)憲法学

                                                                                  ヴァーミュール『リスクの立憲主義』合評会 後編 - けいそうビブリオフィル
                                                                                • 自由と幸福の相克を乗り越えられるか | 大屋 雄裕 | 政策シンクタンクPHP総研

                                                                                  No man is an island, entire of itself; every man is a piece of the continent, a part of the main ――John Donne, MEDITATION XVII. なぜ民主政か(Why democracy?)。 この問いは、民主政が崩壊した末に悲惨な敗戦を迎えたわが国の戦後においては、アクチュアリティをもたなかったかもしれない。われわれはすでにそれ以外で一度失敗しているし、さらにいえば、その際に勝者が採用していたモデルこそ民主政に他ならない。だとすれば、その優位性はすでに証明されている自明のことなのだ、と。 だがその正統性は、この10年程度の世界状況のなかで揺らぎつつあると考えるべきだろう。経済的に急速な発展を遂げた中国は、外交・防衛の面でもその存在感を増し、アメリカの覇権に挑戦しつつある。その中国

                                                                                    自由と幸福の相克を乗り越えられるか | 大屋 雄裕 | 政策シンクタンクPHP総研