コロナ危機のなか、日本社会や日本の政治が、家事や育児といった「ケア」と言われる営みにほとんど関心を持っていないことがあらためて明るみに出た。ケア・コレクティブ著『ケア宣言 相互依存の政治へ』(大月書店)を翻訳した、同志社大学教授の岡野八代氏がその実態について解説する。 昨年来の新型コロナウィルス大感染が、まさかこれほど長くわたしたちの生活を強く規制し続けるとだれが想像しただろうか。世界ではいまだ多くの地域で医療従事者をはじめとするひとびとの日々の格闘が続き、日本でも沖縄県では3か月に及ぶ緊急事態宣言、首都圏では、オリンピックが終わるまでまん延防止等重点措置が延長され、東京では四度目の緊急事態宣言が続く。 そうしたなか、当初強く意識されたエッセンシャルワーク――どのような事態になっても、市民生活に不可欠な労働・営み――に対する人びとの関心もまた、薄れてきているように感じられる。そこで、以下で