―桐野さんの作品の主人公は、その時々の社会を色濃く映しており、桐野夏生の小説によって、我々は自分がどのような時代に生きているのかに気付かされます。今回、女性の貧困や生殖の問題をテーマにしようと思われた動機はなんでしょうか。 この10年近く、少子化問題が取り上げられる度に、若い女性たちに圧力がかかっていると感じてきました。最近では「卵子が老化する」ともいわれるようになり、女性たちはさらに焦ってきている。一方で非婚化の問題もあり、「結婚もせずにどうやって子どもを産めというのか」と追い詰められる世代について考えていたときに、ニュージーランドでは3割が未婚の母であるとか、フランスにしても出生率は下がっていないことなどを知り、これは日本の戸籍制度が一つの弊害になっていると思ったんです。「生殖とはなんだろう」と調べ始めたら、世界の生殖医療はとても進んでいることがわかりました。ただ、技術は進んでも女性の