東日本大震災から半年間、多くの識者が「国難」、「戦後最大の危機」などと語ってきた。私は、政治・経済、社会問題など各分野の学者や評論家の主張を記事にする論壇担当記者だが、今回ほど浮足立った論壇バブルは見たことがない。今の論壇に必要なのは、震災を忘れず、かつ遠く未来をも見据える誠実さだと強く思う。 かく言う私も、震災で大いに動揺した。仙台市出身。宮城県名取市閖上(ゆりあげ)の遠縁を2人津波で失い、弟の妻は岩手県大槌町で生死の境をさまよった。自衛隊員のいとこは、福島第1原発に放水をした。別の福島市のいとこは、放射能が子供に与える影響を恐れ、仙台市の実家へ越した。 私は東京在住、しかも震災当日は米国出張中で揺れすら体験していない。親族と同じ運命を共有しなかったことが負い目になり、しばらくは身動きもできなかった。今も、少し気が緩むと涙がこぼれる。 ところが、この間の論壇での議論は、いくつかの例外を除