ジャン・ポール・サルトルに、「アメリカの個人主義と画一主義」というエッセイがある。1945年の作である。米国人の多くが、個人主義であることを誇りとしているが、そのじつ、物の考え方があまりにも画一的であることに、サルトルが、驚き、恐ろしさを感じて書かれたものである。翻訳は難しい。ここで「画一主義」と訳された原語は、「コンフォルミスム」である。訳者の佐藤朔も気になったのであろう。わざわざ注釈を添えている。佐藤は言う。 「コンフォルミスムとか、コンフォルミストというのは、政治や時勢に無批判に順応する主義や人間をさす。だから企画にはまった、画一的な思想や生活様式をもつアメリカ人も画一主義者といいうるわけである」。 米国は、人種の坩堝(るつぼ)だと言われる。これは、世界各国から異なる文化的背景をもついろいろな人種が、坩堝の中で溶かされ、米国人という新しい民族に鋳直(いじき)されて生まれ変わらされると