スペンスの金融危機についてのエッセイが、PIMCOのサイトに出ている。彼の処方箋は、第一に金融システムのtight couplingを是正し、決済機能と仲介機能を区別して規制すること、第二に危機管理をルール化し、tail riskが生じた場合に自動的に発動できるようにすることだ。 これはもっともだが、規制強化だけで問題が解決するとは思えない。全世界の金融機関を厳重に監視することはできないし、やりすぎると彼らはオフショアに逃れるだろう。へたをすると、SOX法のように有害無益な過剰規制になる。むしろスペンスが重要な業績を上げた情報の非対称性の問題として、原理的に考え直したほうがいいだろう。 伝統的な金融理論では、商業銀行に代表される「間接金融」は投資家が情報劣位にある場合の古いシステムで、企業の財務情報が開示されれば投資家がリスクもリターンもとる「直接金融」のほうが効率的だということになっ
Marginal Revolutionにおもしろい提案が出ている。すべての納税者に政府のデビット・カード口座をつくらせ、そこに政府が一定の金額を振り込む。このデビット・カードは一定の期限が来たら無効になる、というしくみだ。これはスタンプつき貨幣に似たマイナス金利で、電子的に行なえるので役所で金券を渡す方式より効率的で、安全性も高い。日本の定額給付金も、これでやってみてはどうか。 効果をもたせるには2兆円ぐらいではだめで、来年度予算で「4月から消費税を5%引き上げ、その税収増10兆円をこの期限つきデビット・カードで全額還付する」と決めればよい。所得制限なんて必要ない。この政策の主要な効果は、人々の期待に影響を与えることだからである。効果は国会で決まった段階でただちに生まれ、まず4月から上がる消費税を避けるための駆け込み需要が発生する(これは1997年に実験ずみ)。しかし4月以降はその反動で
ハイエクのconstructivismは「設計主義」という変な訳語が定着したため、小谷清氏のように制度設計まで全否定するultra-Hayekianもいるが、これは誤解である。ハイエクが否定したのは、オーギュスト・コントのように政府の知っている「正しい社会」に民衆を従わせる社会工学――フーコーの言葉でいえば真理による支配――の思想である。それにハイエクが対置した法の支配においては、社会的ゲームの規則としての法をどう設計するかという問題がむしろ社会科学のコアとなる。 メカニズムデザインも、よく「計画経済」の理論と誤解されるので、本書ではplannerをあえて「運営者」と訳している。この種の教科書としてはHurwicz-Reiterが最高峰だが、一般の学生には峰が高すぎるだろう。本書はその入門的な部分をやさしく解説し、応用例も入れた日本語で初の教科書である。 ここで重要なのは、運営者がどう
小嶋伸也+小嶋綾香 / 小大建築設計事務所による、中国・安康市の宿泊施設「鹿柴山集 Luzhai cottage」。自然環境に恵まれたエリアの階段状の敷地での計画。風景との調和と建設負荷の軽減を目指し、地元産建材と地域の建設工法でつくる建築を考案。客室の間に“隙間空間”を設けて周辺民家のスケール感とも呼応させる外観、南側より見る。 photo©堀越圭晋 エスエス 小嶋伸也+小嶋綾香 / 小大建築設計事務所による、中国・安康市の宿泊施設「鹿柴山集 Luzhai cottage」。自然環境に恵まれたエリアの階段状の敷地での計画。風景との調和と建設負荷の軽減を目指し、地元産建材と地域の建設工法でつくる建築を考案。客室の間に“隙間空間”を設けて周辺民家のスケール感とも呼応させる外観、南側より見る。 photo©堀越圭晋 エスエス 小嶋伸也+小嶋綾香 / 小大建築設計事務所による、中国・安康市の宿泊
気になる記事をスクラップできます。保存した記事は、マイページでスマホ、タブレットからでもご確認頂けます。※会員限定 無料会員登録 詳細 | ログイン 見ることは簡単だが、見て理解することは意外と難しいことのようだ。 工学部に進学してきた3年生に飛行機の翼の断面形つまり翼型を書かせると、大甘に採点しても合格点を付けられるのは30%くらいだ。飛行機に乗ったことのない学生はほとんどいない。翼近くの席に座って外を見たことがあるかもしれないし、搭乗ゲートの近くから駐機している飛行機を見ることもあったはずだ。しかし、70%の学生は見ても憶えていないし、理解していない。 正確に観察して正確に理解することはやさしそうで実は難しいことなのだ。だから設計の教育では対象物をスケッチしたり図面化する訓練が大切だ。 このことは経営についても言えるだろう。よほど小さな企業でなければ、企業経営のすべてを見ることは難しい
自由主義的な家父長主義というのは形容矛盾で、読むと気分が悪くなりそうだが、これは一種の冗談で、まじめにいうと「これまで非現実的な『合理的経済人』を想定して行なわれてきた制度設計を、もっと現実的な人間の行動にもとづいて考え直す」ということだ。 新古典派経済学では、人々はすべての問題について効用最大化の選択を行なうことになっている。しかし、たとえばあなたが職場に行くとき、何時に起きて朝食で何を食べ、どんな服を着て何時に家を出るか・・・など多くの問題があり、それぞれについて多くの選択岐があるので、すべての選択肢について効用最大化の計算をしていると、組み合わせの爆発が起きて、会社に遅刻してしまう。 だからあなたが取る行動は、いつも同じ時間に起きて同じような朝食をとり、同じような服で同じ時間に家を出るという習慣的な行動だ。実験経済学でも、人々の行動のほとんどは積極的な選択の結果ではなく、習慣によ
水町勇一郎・東大社会科学研究所准教授に聞く 当コラムで2回にわたって、「正社員の整理解雇を容易にする改革」が必要であると書いた。その主張の理念的背景と方法論を提示してくれたのは、各国の最新の労働法制改革を熟知する若手の労働法、労働経済学者たちだった。その中心人物である水町・東大社科研准教授に、「新しい労働ルールのグランドデザイン」を聞いた。これは要約版であり、全文は2倍以上ある。完全版は来週以降に掲載する予定だ。 ――水町さんは、連合総合生活開発研究所(連合総研)で「新しい労働ルールのグランドデザイン策定に向けて~イニシアチヴ2008研究委員会~」の主査を務めておられますね。 水町:はい。メンバーは20代から30代の労働法学者、労働経済学者が中心。外国の労働法制の基礎研究をしっかりと行い、直近の改革についても熟知している若手たちで、政府の審議会にも入っていない、自由に発言できる方がたで
情報テクノロジーによる監視システムの普及によって、わたしたちの「自由」がおびやかされるのではないか? そんな言葉を耳にしたことはないだろうか。あるいは、実際にそんな感覚を抱いたことはないだろうか。 たとえば、東京新宿の歌舞伎町に足を踏み入れると、50基の監視カメラが設置されている。効率的に配置されたカメラ群を避けながら歌舞伎町のなかをウロウロすることは、至難の業ともいわれる。 こうした監視システムの多くは、安全快適な社会を実現しようという善意のもとにつくられている。しかし、わたしたちの行動を監視し、記録し、分析し、先取りしようとする監視技術の普及に不自由さを感じる人がいても不思議はない。 「わるいことさえしなけりゃ関係ないだろ。むしろ安心じゃないか。カメラを嫌がるのは、なにかうしろめたい事情でもあるからじゃないの?」 「いやいや、わるいことをしようがしまいが、勝手に自分の行動が記録されると
幸福論―“共生”の不可能と不可避について (NHKブックス) 作者: 宮台真司,鈴木弘輝,堀内進之介出版社/メーカー: 日本放送出版協会発売日: 2007/03メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 43回この商品を含むブログ (64件) を見る 「フィールグッド」をめぐる議論 社会システム論者であり、設計主義的な考えを持つ宮台真司氏と、それにややリベラルな立場から対抗する鈴木・堀内氏との鼎談。緻密な論理と華麗な用語を駆使する宮台氏の発言は、その「地頭の良さ」を感じさせるが、それに裏打ちされたところのエリート主義的発言の感じ方は、まあ人それぞれかも知れない。 この鼎談においてキーワードとなるのは、「過剰流動性」「不安のポピュリズム」「フィールグッド・ステイト」などである。これらの重要性に関し、3者は一定の合意をしているが、その認識の仕方には、それぞれの立ち位置から生じる相違点がみえてく
Web2.0の世界では、「CGM - Consumer Generated Media」(消費者生成メディア)における、「UCC - User Created Content」あるいは「UGC - User Generated Content」と呼ばれるいわゆる「ユーザーによって作成されたコンテンツ」に大きな可能性を感じている人が大半のようです。一方、UGC懐疑派の人も未だ多いとの話も聞きます。 確かに「クチコミ」に代表されるネット上の書き込みや、ブログやSNS上のレビューや批評の中には、巨大メディアに劣らない高いクオリティーを持つものも多いですし、イベントのレポート等には(稀ではありますが)プロのジャーナリスト顔負けの記事があることも事実です。 SNSに目を移せば、基本的にSNS自体がUGCで成立しており、その力たるや物凄いものがあるな、と感じています。 実際のところいわゆる既存メディア
9坪は29.75206㎡です。 カシオ計算 1坪 = 3.3057851239669 ㎡ https://keisan.casio.jp/exec/system/1236214087 9 坪 = 29.75 ㎡ = 19.22 畳(江戸間) 9 坪 = 29.75 ㎡ = 16.31 畳(京間) 1坪・平米・畳の換算値 1坪 = 約 3.30578 ㎡ 1㎡ = 約 0.3025 坪 1畳(帖) = 1.548 ㎡ ( 江戸間 ) https://www.shoshinsha.com/tools/tubo_menseki/tubo.html 【図解】江戸間とは?京間・団地間との違い、広さと畳の大きさまとめ https://woman.chintai/article/knowledge/0726_edoma_toha/ https://www.ur-net.go.jp/chintai/col
ケインズは、疑いもなく20世紀のもっとも重要な経済学者だが、現在の経済学界では、その影響はマクロ経済学の入門書以外にはほとんど残っていない。学部でIS−LM図式などを勉強した学生は、大学院ではそれがもう過去の理論だと教えられ、まったく別の「新しい古典派」理論を学ぶ。そこには、非自発的失業も名目賃金の硬直性もない。 しかしケインズの『一般理論』(ウェブで全文が読める)を読んだ人は、ここからどうやってIS-LMが出てきたのか不思議に思うだろう。その翌年、いろいろな批判に答えてケインズが『一般理論』のエッセンスを15ページにまとめた論文では、彼は一貫して不確実性こそ自分の理論のコアであることを強調し、均衡理論的な解釈を拒否している。 投資水準は資金需給の均衡ではなく、予測不可能な未来についての投資家の心理で決まるので、それが完全雇用を実現する保証はない。他方、その資金をもつ資産家は、不確実性
MIAUの津田大介さんが、ダウンロード違法化の問題として以下の点を挙げられています(ソース)。 “ダウンロード違法化”によってもたらされるメリット、つまり著作権侵害対策という目的とその実効性に比べて、“ダウンロード違法化”がもたらす副作用によってもたらされるデメリットの方が大きくて、バランスが良くない この考えには全面的に賛成します。法改正は常に実効性と副作用を前提で考えるべきです。法律とは理想のあるべき姿を決めるものではありません。あくまでも現実的制約の中での最適解を求めるものでべきです。ある行為が社会秩序的に望ましくないからと言って、その行為を直接的に違法化することが必ずしも最適解に結びつくとは限りません。一般に、制度設計を考える上で、「副作用」は重要なキーワードだと思います。 これは、あたかも、情報システムの設計において、インプリメンテーション(実装)を考えないアーキテクチャが意味が
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