61万人といわれる中高年のひきこもりは、高齢の親が亡くなった途端に命の危険にさらされる。神奈川県横須賀市職員の北見万幸さんは、長年ひきこもっている50代男性の自宅を、何度も訪問してきた。「食事持ってきたよ」とガラス戸越しに声をかける。男性は両親が他界して1人残され、体力の衰えが目立つが、それでも北見さんの入院説得に応じない。 本人の意思に反して、自治体が医療機関につなぐことはできない。保健所に来てもらったこともあったが、「強制はできません」といわれた。「まいったなあ。死んじゃうよ、どうすりゃいいのか」と、北見さんは嘆く。 去年(2018年)12月の訪問から10日後、男性は衰弱死した。訪ねても姿を見せなくなったのを心配した北見さんが、警察官と室内に入って発見した。56歳だった。「男性の存在把握から1か月半でした。何もできなかった。出会うタイミングが遅すぎました」 この男性「伸一さん」は、両親