日本人の贈与論 「菊と刀」は、太平洋戦争時にアメリカ政府が敵である謎の民族日本人を知るために、文化人類学者ルース・ベネディクトに分析を依頼して作成されました。文化人類学と言えば、モースの「贈与論」が有名です。未開社会では贈与と返礼というエコノミーにより、社会秩序が運営されていることを発見しました。贈与のエコノミーとは、贈与に対して返礼するという交換を基本とします。モースの贈与論では、贈与されると返礼がマナという神的な力にまで昇華されて、人々の行動を強制します。 「菊と刀」もまた贈与論の系譜にあります。日本人は恩、義理、恥などの贈与のエコノミーが強く働く人びととして、西洋人の合理主義と相対化して描かれました。この方法は多くにおいて成功していると思います。ある面で、これほど日本人の特性をうまく分析している本は他に見当たりません。 ルース・ベネディクトは日本を一度も訪れずにこの本をかきましたが、
![なぜ「菊と刀」は名著なのか - 奴隷こそが慈悲を施さなければならない](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/b0910c0f041e1d199e85fcb099539715cb61286a/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fcdn-ak.d.st-hatena.com%2Fdiary%2Fpikarrr%2F2018-01-27.jpg)