そこには希望だけがあった。ただの希望ではない。ガムを買ったくじ引きで当たったふたつ目のガムのような希望だった。欲していたものはいらないものだったのに、それを告げることができないで躊躇している。 垂直に、次々に落下する雷をみながら、まるでライブ会場にいるみたいと言ったある人の言葉は、ちょうどサルトルの『一指導者の幼年時代』の主人公が森をみて、これはぜんぶ材木でできているんだねと言ったセリフを思い出させた。 模倣がオリジナルである時代は希望しかないが、その希望はいらない希望でできていた。 私はまだいけない夢を見ているのだろうか 凍った蓮華蜜を熱いミルクで溶かす すると間違いのような春がやってくるのだが 夢の高度を保てぬ者には苦しむことの自由さえ訪れまい けっしてまっすぐには進まない言葉を使って事物に向かってまっすぐにすすむこと、それだけが試みにあたいする。レールのように、曲がっているのはまっす