PDFで読む 3 ストリートの2つの見方―デリダ的差異からドゥルーズ的差異へ ここまで,(1)「冷酷さ」を漂わせる現代のストリートは,写真家の感性に人と街の分離として嗅ぎ取られる,二重に反転した後の姿をさらしていること,したがって,(2)その消去の消去という二重の屈折を意識した系譜学を意識化しないと現代のストリートには正しく接近できないこと,つまり,近代福祉国家的な生・政治と監視管理社会との二層を遡及しなければならないこと,を見てきた。こうして,上記の意味での精緻な考古学,系譜学を可能にするストリート民族誌が急ぎ必要であることが明らかになった。 では,それを実践することで,一体どんな世界が見えてくるのであろうか。 一言で言うなら,それは〈臨床の知〉が導き出すだろう,新しいリハビリテーションの思想(久保田・宮井 2005)とでも言うべきものである。中村雄二郎は『臨床の知とは何か』でこう述べる