金井美恵子『本を書く人読まぬ人とかくこの世はままならぬ PART II』(日本文芸社)を読む。例の如く毒舌満載のエッセイ集。 宮沢賢治の童話に『どんぐりと山猫』というのがあって、山のなかにうじゃうじゃ住んでいるどんぐりたちが誰が一番エライかと争いをはじめ、山の判事として裁ききれなくなった山猫が、村の一郎という子供に知恵を借りて争いを丸く収め、一郎はそのお礼に黄金のどんぐりを1升もらって帰るのだが、家に戻ってみると、それはただのどんぐりだった、という話である。(中略) 鏡花賞以来、地方の文学賞というのが大変に盛んらしく、あれこれと批判めいた言葉を眼にしたり耳にしたりもする。そうした話が出た折りに、鏡花賞の受賞者と選考委員を前に、私は冗談のつもりで、『どんぐりと山猫』のあらすじを紹介してから、宮沢賢治賞というのがあれば、正賞は黄金メッキのどんぐりがいいのじゃないか、その意味はむろん「どんぐりの