三月下旬から四月上旬は、この街が最も汚くなる季節だ。冬の終わりとも春の訪れとも言い切れない、暖かいようなまだ寒いような半端な気温で、道路脇に積もった雪が解け始め、融雪剤を含んだまだらの暗灰色の山があちこちにできる。足元はびしゃびしゃでざりざりしていて、地面が乾くとそれらが舞って埃っぽくなり、大気はかすんだようになる。 僕は昔から、この汚れた季節が大嫌いだった。 - まあ、せっかくだから、一応、言っておこう。 「僕は昔から、この汚れた季節が大嫌いだった。今年までは。」 その日のこと、その後のできごとを時系列で詳細に書くのもなんなので、ぽつぽつと考えたことや周辺のことをメモ程度に残してみる。 - 2012年4月10日、僕に娘が生まれた。 ひとつ前の壬辰の年は1952年で、誕生日と同じ4月10日にはラジオドラマ「君の名は」が始まっている。「真知子巻き」でおなじみのヒロインの名前を借りて、僕たちの
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