戦後ずっと「アメリカの平和」のもとでモラトリアム状態だった日本にも、戦争のリアリティが迫ってきたが、軍用機に「ゼロリスク」を求める平和ボケはいまだに直らない。オスプレイを配備しないために多くの人命が失われるリスクを考えないで沖縄でデモをしている人々には、戦争という目的が見えていないのだ。 本書が日本軍の敗因として指摘するのも、目的意識の欠如である。1941年11月2日に出された「帝国国策遂行要領」は、日米戦争の目的を「自存自衛ヲ完フシ大東亜ノ新秩序ヲ建設スル」こととしているが、この「自存自衛」とは何のことか、どこにも説明がない。 一般には自存と自衛は同義で、前者が19世紀の用語だとされているが、自衛のためにアメリカに宣戦布告するというのはどういうことか。どうなれば勝ったことになるのか――それもまったく説明されていない。敵国に侵略された場合には原状を回復することが自然な目的になるが、日本は領
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