北野 ベテランの棋士は自分の一番力の出る土俵に追い込んで戦うと滅法強いです。本にも書いたことですが、羽生善治九段は名人になるまで順位戦で11敗しかしていないんですけど、そのうち8敗はベテランといえる棋士でした。同世代や少し上の55年組の世代にはほぼ負けていないのに。 勝率が5割を切るベテランが「羽生君と戦えるんだ」という気持ちで、その一局に懸けた結果なのだと思います。羽生さんは負かされた後、敗因がなんだったのか分からずにずっと考え続けた将棋も順位戦であったそうです。 野澤 武士が最後の一太刀を振ってくるような気迫を感じますよね。昔、A級残留争いの中、最終戦で大御所の中原(誠十六世名人)、米長(邦雄永世棋聖・故人)、加藤(一二三九段・故人)が勝って、やっぱり残るのはこの3人かみたいな時代がありました。私は「大一番全盛期論」と勝手に呼んでいるんですが、順位戦の“大一番”には、ベテランがピークに

