どこにも属さないわたし [著]イケムラレイコ 彼女は幼い頃から両親の子ではないという疎外感に悩む。「どこにも属さない」異邦人意識の無所属の人。こういう人は宿命的に運命に導かれるという因子を持つ人である。 天涯孤独を妄想する幼い心と絵心を持つのは僕と同じだが、僕は彼女のように読書家でもなく外国語も話せない。故郷を後に、海外に居場所を求めるボヘミアン気質も全く持ち合わせていない。そんな僕は本書を伴侶として、彼女の後をつきまとうようにスペインからスイス、ドイツへと移動しながらアクチュアルな美術の巣窟に著者と潜り込むことで彼女の内面をそっと覗かせてもらうのである。 そして彼女の絵筆に触れながら、彼女の創作体験を味わうのだった。彼女の展覧会の成功も一緒になって歓んだりするのである。 彼女がドイツのケルンを本拠地にペインターとしてデビューした1980年頃は、僕が画家に転向した時期と一致する。ワイルドペ