「宇多田ヒカルを聴いて、思い出すのが校庭の匂いなら、きみの幼少期は最高なもの。」 この一節が入っている詩を書いたことがある。私は小学生の頃、生まれて初めて買ったCDアルバムが「First Love」だった。お小遣いほとんど使って買ったそのCD、触る時しばらく手袋してた。新しく発売した『初恋』のビニールを剥がす間、そのことを思い出していた。特別な瞬間があの時、訪れていた。音楽を買うというのはどういうことなのか、まだ何にも分からなかった、それまで欲しいものって、美味しいものとか面白いものとか、ばかりで、なんだかすごく好きで、でも、それがどうしてか分からないもの、そういうものを買うのは初めてのことだった。勇気がいった。それは価値が見合わないからとかそういうことではなかった、高すぎるから、ということでもなかった、自分を自分じゃないものが突き動かしているように思えて、戸惑っていた。私は、私のことをよ