通りに集まる路上生活者たち=米東部フィラデルフィア市ケンジントン地区で2024年3月29日、中村聡也撮影 使用済みとおぼしき注射器が至るところに、針がむき出しのまま落ちていた。歩道には残飯や酒瓶、たばこの吸い殻も散乱していた。そのそばを何組もの親子が通り過ぎていく。見上げた空は快晴だったが、目の前の世界は陰りを帯びていた。 米東部ペンシルベニア州フィラデルフィア市にあるケンジントン地区。鉄道駅を結ぶ高架下約900メートルに薬物中毒者がたむろしていた。 そのうちの一人、ライアンさん(39)はフェルトペンのキャップほどの小さな容器を持っていた。少量ずつ入っているのは、麻薬性鎮痛剤「オピオイド」の一種でケシを原料とする「ヘロイン」と、覚醒剤「メタンフェタミン」の粉末だ。 「ヘロインだけでは眠気に襲われるから、目を覚ますためメタンフェタミンを混ぜている」 列車が通るたびに、「ゴー」という騒音が耳を