安保法制が違憲かについて、朝日新聞が6月に憲法学者209人を対象にアンケート調査を行い、7月11日に発表した。それによると、回答者は122人。うち、違憲回答が104人、違憲の可能性が15人、合憲が2人だった。このことを報道価値として、「安保法案「違憲」104人、「合憲」2人 憲法学者ら」(参照)とする記事が掲載された。 違憲104人に対して合憲2人というと、圧倒的な対比に思われるが、回答が約58%であり、未回答者のついての取材はなされていなかった。ただし、アンケート対象209人に偏りがあったとも思われないことは、有斐閣の判例集「憲法判例百選」執筆者全員を対象としたことから察せられる。該当の朝日新聞報道から理解できることは、憲法学者の大勢が安保法制を違憲と考えているということで、そのこと自体は実態を反映しているだろう。 アンケート詳細も興味深いものだった。なかでも「現在の自衛隊の存在は憲法違
日本国憲法の矛盾を考える上での参考書というのものがあればいいなと、この間思うことが多く。そういえば、あれは参考になるかなと、ふと思いついたのが橋爪大三郎『政治の教室』(参照)だった。2001年10月に出た新書である。現在は文庫化されている。 率直に言うと良書とは言いがたい。「あ、これはないなあ」と思われる説明(例えば「法の支配」の説明など)も目に付く。それでも、この本はかなり言い切っているなあと思えたのと、日本国憲法については、護憲か改憲かみたいな紅白歌合戦みたいな暢気な構図が多いなか、そういう色分けから少し脱しているという点で、ちょっと触れてみたい。 表題の『政治の教室』だが、そのとおりに、政治とはなにかということを学ぶことに力点が置かれている。別の言い方をすれば、若い人が政治参加するときにどういうことを最初に学んでおくとよいかという前提的な議論がまとめられている。若い人の政治参加が求め
[写真]外国特派員協会で会見した長谷部恭男・早稲田大教授(右)と小林節・慶応大名誉教授(左)。長谷部教授は「95%を超える憲法学者が違憲だと考えているのではないか」とも語った。 憲法学者の長谷部恭男・早稲田大教授と小林節・慶応大名誉教授が、衆院憲法審査会で安全保障関連法案を「違憲」と指摘した。長谷部教授は「95%を超える憲法学者が違憲だと考えているのではないか」とも語る。憲法学者による疑義に対し、菅官房長官は、「安保法制を合憲と考える学者もたくさんいる」と反発したが、後日、「数(の問題)ではない」と述べ、事実上前言を撤回した。そもそも、なぜ圧倒的多数の憲法学者が集団的自衛権を違憲と考えるのだろうか。憲法が専門の木村草太・首都大学東京准教授に寄稿してもらった。 ------------- 1.集団的自衛権はなぜ違憲なのか 6月4日の憲法審査会で、参考人の憲法学者が集団的自衛権行使容認を違憲と
衆議院憲法審査会で参考人質疑が行われ、安全保障関連法案について、「従来の政府見解では説明がつかない」という指摘や「憲法9条に明確に違反している」といった意見が出され、出席した3人の学識経験者全員がいずれも「憲法違反に当たる」という認識を示しました。 この中で、自民党、公明党、次世代の党が推薦した、早稲田大学法学学術院教授の長谷部恭男氏は、「集団的自衛権の行使が許されることは、従来の政府見解の基本的論理の枠内では説明がつかず、法的安定性を大きく揺るがすもので憲法違反だ。自衛隊の海外での活動は、外国軍隊の武力行使と一体化するおそれも極めて強い」と述べました。 民主党が推薦した、慶応大学名誉教授で弁護士の小林節氏は、「仲間の国を助けるため海外に戦争に行くことは、憲法9条に明確に違反している。また、外国軍隊への後方支援というのは日本の特殊概念であり、戦場に前から参戦せずに後ろから参戦するだけの話だ
2014年07月05日 政府の閣議決定について:補足 パリから帰国しました。二つの会議で講演をしてきて、建設的なディスカッションを楽しんできました。ちょうど今の時期のパリは、バカンス前で皆さんとても機嫌が良く、さらにはフランスがW杯でグループリーグを突破したので、天気が良かったとのあわせて、町中の雰囲気が明るかったです。先ほどの試合で、フランスがドイツに負けたようですが、その前に帰ってきて幸いでした。はたして、ちょっと雰囲気が悪くなっているのでしょうか。 それにしても、先日投稿したブログのエントリーが、驚くほど多くの方に読んで頂いているようで、自分でも驚いております。いつもは、一日あたりで100名ほどのアクセスなのですが、なんと昨日は4万3千アクセス。驚異的です。私のイギリス外交史についての研究書もこれぐらい売れてくれれば、出版社の方も喜んで頂けるのですが。なかなかそうもいきません。 海外
2014年07月02日 集団的自衛権の行使容認に関する閣議決定 7月1日、昨日になりますが(私はパリにいるのでまだ7月1日です)、安倍晋三政権で集団的自衛権の行使容認をめぐる閣議決定がありました。2006年に第一次安倍政権が成立してから実に8年が経っています。私は、2013年9月から、安保法制懇のメンバーに入りまして、今年の5月15日に安倍総理に提出された報告書作成にも多少は安保法制懇有識者委員としては関係しておりますし、報告書提出の際にも首相官邸で安倍総理の近くに座ってその重要な場面に居合わせることができました。 この問題をめぐるマスコミの報道、反対デモ、批判キャンペーンを見ていて、少々落胆しております。あまりにも、誤解が多く、あまりにも表層的な議論が多いからです。昨年11月には、特定秘密保護法案が成立しました。その際にも同様の誤解に基づく反対キャンペーンがあって、うんざりしました。特定
メルマガでも書いたんですが、ちょっと例の集団的自衛権の閣議決定を強行したことで明らかに安倍政権に対する支持の構造が劣化したように感じられるのでメモ風に。 興味関心の部分においては細谷雄一さんのブログに概要までは書いてありますけれども、中韓首脳会議前にブチ込みたかった件や公明党との鍔迫り合いその他で「この時期しかなかった」というのは分からないでもないんですけどね。 集団的自衛権の行使容認に関する閣議決定 http://blog.livedoor.jp/hosoyayuichi/archives/1865199.html 速報その他については読売が書いてますが…。 内閣支持率、5割切る…政府・与党に衝撃 http://www.yomiuri.co.jp/politics/20140703-OYT1T50197.html アメリカなどと違い、日本の場合は投票に行く人と行かない人との差はあまり考慮
安倍首相は7月1日の臨時閣議で、自衛権発動の要件について憲法解釈を変える閣議決定をした。 具体的にどう変わったのだろうか。 変更部分のビフォー・アンド・アフター(before and after)はどうなったのだろうか。 ビフォーについては自衛隊サイト「憲法と自衛権」(参照)から引用し、アフターについては、閣議決定「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備ついて」(参照)の該当部分を抜き出して三点の項目に整理してみよう。 ビフォー:自衛権発動の要件 ① わが国に対する急迫不正の侵害があること ② この場合にこれを排除するために他に適当な手段がないこと ③ 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと アフター:自衛権発動の要件 ① 日本への武力攻撃や密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白
元自衛官の泥 憲和さんの言葉です。 ぜひ読んでみてください。 そして集団的自衛権について考えてみてください。 街頭にて 突然飛び入りでマイクを貸してもらいました。 集団的自衛権に反対なので、その話をします。 私は元自衛官で、防空ミサイル部隊に所属していました。 日本に攻めて来る戦闘機を叩き落とすのが任務でした。 いま、尖閣の問題とか、北朝鮮のミサイル問題とか、不安じゃないですか。 でも、そういったものには、自衛隊がしっかりと対処します。 自衛官は命をかけて国民をしっかり守ります。 そこは、安心してください。 いま私が反対している集団的自衛権とは、そういうものではありません。 日本を守る話ではないんです。 売られた喧嘩に正当防衛で対抗するというものではないんです。 売られてもいない他人の喧嘩に、こっちから飛び込んでいこうというんです。 それが集団的自衛権なんです。 なんでそんなことに自衛隊が
本日、政府は、集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定を行った。 集団的自衛権の行使容認は、日本が武力攻撃をされていないにもかかわらず、他国のために戦争をすることを意味し、戦争をしない平和国家としての日本の国の在り方を根本から変えるものである。 集団的自衛権の行使は、憲法第9条の許容するところではなく、そのことはこれまでの政府の憲法解釈においても長年にわたって繰り返し確認されてきたことである。 このような憲法の基本原理に関わる重大な変更、すなわち憲法第9条の実質的な改変を、国民の中で十分に議論することすらなく、憲法に拘束されるはずの政府が閣議決定で行うということは背理であり、立憲主義に根本から違反している。 本閣議決定は「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」等の文言で集団的自衛権の行使を限定するものとされているが、これらの文言は極めて
集団的自衛権に何を思うのか――アフガニスタンなどで武装解除・平和構築の現場を体験した伊勢崎賢治氏、元防衛官僚でイラク自衛隊派遣にも携わった柳澤協二氏が語り合う。憲法と社会問題を考えるオピニオンウェブマガジン「マガジン9」が主催する第32回マガ9学校『集団的自衛権と自衛隊「積極的平和主義」はホンモノか』の模様を一部抄録。 伊勢崎 ぼくと柳澤さんは、「自衛隊を活かす 21世紀の憲法と防衛を考える会」というのをやっていて、現行の憲法の中で、自衛隊をどう生かせるのか考えています。 柳澤さんは、自衛隊をイラクのサマーワに派遣した張本人ですね。ぼくは、その時、アフガニスタンでDDRをしていたので「自衛隊を派遣するならアフガンだろう」と騒いでいて、はじめてビデオニュース・ドットコムで対談した時に、ああ、この人が自衛隊を出したのかと思いました(笑)。今日は柳澤さんと集団的自衛権についてお話できればと思いま
日本の「右傾化」が国内外のメディアで盛んに論じられている。それは日本の現状を正しく反映しているのか。集団的自衛権行使容認やヘイトスピーチなど、いわゆる「右傾化」現象の本質に迫る。 「右傾化」論を読み直す 昨今、日本および海外のメディアでは、現在の日本における「右傾化」の傾向がしばしば論評の対象になっている。たとえば、『ウォールストリート・ジャーナル』(電子版、2014年2月26日配信)には、「アジアでの緊張関係が日本に右傾化をかきたてた」(Tensions in Asia Stoke Rising Nationalism in Japan)と題する長文の署名記事が載っている。そこでとりあげられているのは、一方では『WiLL』のようなナショナリストの雑誌が売れ、中国や韓国をあからさまに侮蔑する書物が大量に刊行され、選挙においても同様の主張をする候補者が選挙で多くの票を得るといった社会の「全体
来年も作りたい!ふきのとう料理を満喫した 2024年春の記録 春は自炊が楽しい季節 1年の中で最も自炊が楽しい季節は春だと思う。スーパーの棚にやわらかな色合いの野菜が並ぶと自然とこころが弾む。 中でもときめくのは山菜だ。早いと2月下旬ごろから並び始めるそれは、タラの芽、ふきのとうと続き、桜の頃にはうるい、ウド、こ…
仲間由紀恵が敵由紀恵に寝返ったらお前らどうすんの?という有名なネタスレがあるが、仲間とうまくやるためには憲法はいらない。敵とうまくやるために憲法が必要なのだ。国というものは、仲間が寝返ったからと言って、簡単に出ていってもらったり自分が出ていくことができないので、敵とうまくやる装置はどうしても必要だ。 私は、9条は変えるべきだと思っているし、原発以外については、おおむね自民の政策がマシだと思っている。原発も新設阻止より廃炉と福島第一の処理の方が重要だと思っていて、それがうまくできそうなのは自民ではないかという気がしている。 だが、というか、それだけにむしろ、自民党の改憲案には絶対反対だ。 あれが通って、その後で、民主党がもう一度政権を取ってしまったら、どうなってしまうか心配するからだ。 民主党がもう一度政権につくことはないと思うが、それよりもっとひどい政党が政権につくことはあり得るだろう。
「1票の格差」が最大2・43倍だった昨年12月の衆院選について、弁護士グループが広島1、2区の選挙無効(やり直し)を求めた訴訟で、広島高裁(筏津(いかだつ)順子裁判長)は25日、広島1、2区の選挙を無効とする判決を言い渡した。 「ただし、今年11月26日の経過をもって、その効果は発生する」とした。 昨年の衆院選を巡っては二つの弁護士グループが全国14の高裁・支部に提訴しているが、選挙無効としたのは初めて。
中央大学教授 橋本基弘 憲法は施行から65年が経ちました。日本国憲法に基づく政治は完全に定着したように思われます。一方で、昨年の東日本大震災をきっかけとして、政治の機能不全が明らかになりました。いわゆる「決められない政治」の問題です。 しかし、「決められない政治」の原因は「ねじれ」にあるのでしょうか。参議院が強いからでしょうか。ここではこの問題を考えてみたと思います。「ねじれ」は本当に病理現象なのか、あるいは異常な事態なのでしょうか。わたくしはそうは考えません。 まず、現在の衆参両院それぞれの選挙制度を見てみましょう。 衆議院は、「小選挙区比例代表並立制」と言われる選挙制度により議員が選出されています。総議席数は480名です。そのうち300名を小選挙区制から選び、180名を11の比例区から選びます。これに対して、参議院は選挙区選出と比例代表区を組み合わせた選挙制度です。 議員総数24
オバマ米大統領のノーベル平和賞授賞式演説について、日本のマスコミでもブログの世界でもそれほど話題になっていない印象がある。私はダルフールのジェノサイドを「ジェノサイド」と明確に言明し、その犯罪責任を曖昧にしないこの演説に感銘を受けた。同時に、彼の平和思想の起源と、日本国憲法の平和主義の類似性について関心を持った。思いが拡散してしまう前にメモ書きをしておきたい。 オバマ米大統領のノーベル平和賞授賞式演説だが、その主要テーマは何であろうか? この演説をオバマ米大統領の平和主義と呼んでよいだろうか? その前提となる平和主義とは何か? いろいろと曖昧な問題が複数立ち上がる。そもそも平和主義という概念が成立するのか? 成立すると見てよい。その場合、コアとなる概念は、暴力・武力放棄による紛争・対立の解決となるように思われる。 この時点でまた疑問が二点浮かぶ。武力の放棄は平和主義の本質のなすものだろうか
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