これまで長い時間をかけて、ベタ組みに則しながら日本語組版についての考察を重ねてきました。そこで見てきたものは、現在、主として使われている日本語書体が正方形のなかに最適化されるようにデザインされてきたこと、日本語組版においては組版濃度を一定にすることではなく、むしろ濃度差を確保することが、記号類・約物類が果たす文章構造の視覚的明示性を高め、結果的に「読みやすさ」につながるのではないか、というものでした。 ここで述べてきたことは、唯一絶対のルールを定めるためではなく、あくまでひとつの基準、出発点としてのスタンダードな組版のあり方を示すためのものです。そうしたことに取り組もうと考えた動機は、日本語組版において明確なルールが存在しないことにありました。 いま、日本語書籍・雑誌のデザインは大きな転換期にあります。電子媒体の台頭に伴い、そのあり方に変化が生じてきているからです。変化があること自体は悪い