「もう限界です」──82の国立大学法人が参加する国立大学協会は6月7日、日本の国立大学の財務状況に関する声明を発表した。物価高騰や円安などの影響で、国立大学の財務状況は悪化し続けているという。 国立大学法人の収入源は、学生からの納付金や病院収入などの自己収入、受託研究費や寄付金、研究者個人に与えられる科学研究費補助金などの他に、国からの運営費交付金と呼ばれる資金がある。運営費交付金は活動資金の中でも大きな割合を占めているが、2004年度以降、減少傾向という。
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。通常は新規性の高い科学論文を解説しているが、ここでは番外編として“ちょっと昔”に発表された個性的な科学論文を取り上げる。 X: @shiropen2 米スタンフォード大学や米UCバークレー、米ペンシルベニア大学に所属する研究者らが2019年に発表した論文「Extensive childhood experience with Pokemon suggests eccentricity drives organization of visual cortex」は、幼少期にポケモン(ポケットモンスター)に熱中していたことが、成人してから脳の機能的構造にどのような影響を与えているかを調べた研究報告である。
なぜカシオの「関数電卓」は2200万台も売れているのか 電卓から見えてきた、海外と日本との“違い”:海外が大半(1/3 ページ) カシオ計算機の関数電卓が売れている。年間2200万台ほど売れているというが、その大半は海外の国(100カ国以上)が占めている。なぜ日本ではなく、海外で人気を集めているのか。 「関数電卓」と聞いて、イメージがわかない人も多いかもしれない。三角関数や指数関数などの計算ができたり、式や数字が見やすかったり、表やグラフが表示されたり。理系の学生は使ったことがあると思うが、なぜ複雑な計算ができる電卓が海外で広がっているのか。その理由について、カシオ計算機でマーケティング部門を担当する熊田太郎氏と星登氏に話を聞いた。 2023年に発売したスタンダード関数電卓「ClassWiz(クラスウィズ)」の新製品「CWシリーズ fx-JP900CW/fx-JP700CW/fx-JP50
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。 X: @shiropen2 この問題は「ラングランズ・プログラム」と呼ばれる大きな構想の一部である。ラングランズ・プログラムは、数学のいくつもの異なる分野の間に深い関連性があることを提案した考えで、そのアイデアは、1967年に数学者ロバート・ラングランズさんが別の数学者アンドレ・ヴェイユさんに宛てた手紙にさかのぼる。 そこでは「数論」と「調和解析」という明らかに異なる2つの数学の分野が実は深く関連しているというアイデアを提唱していた。しかし、ラングランズさんは実際にこれを証明することができず、自分が正しいかどうか確信が持てなかった。 ラングランズさんのアイデアを用いて、ある数学の
プレイステーション5(PS5)は2023年度に全世界で2080万台売れ、累計販売台数は、3月末時点で5920万台になった。ソニーグループは、これを「同じ期間で計100ドルの値下げを実施したPS4の6000万台に近い水準」として、発売から2年も品不足に苦しんだPS5の巻き返しをアピールした。 5月14日に発表されたソニーグループの2023年度連結決算では、ゲーム事業の好調ぶりが浮き彫りになった。ハードだけではない。ソフトウェアでは、2月にPCとPS5向けに発売した「HELLDIVERS 2」が5月初旬までの12週間で1200万本(PC、PS5合算)を突破。22年の「God of War Ragnarok」の記録を抜き、SIEが手がけたPC向けタイトルとしては過去最大のヒット作になった。業績にも大きく貢献したという。 PS5の普及やサードパーティータイトルのヒットを背景に、PS全体の月間アクテ
スクウェア・エニックス・ホールディングスは4月30日、2024年3月期に約221億円の特別損失を計上する見込みだと発表した。同社は3月の取締役会にて、HDゲームタイトルの開発方針の見直しを決議。これを受け、ゲーム開発の状況を精査したところ、コンテンツ廃棄損として、約221億円を計上する見込みとなった。 関連記事 あす発売「FF7リバース」パッケージ版に不備 2枚組ディスクの内容が“あべこべ”に SIEの製造過程でミス スクウェア・エニックスは、2月29日に発売するゲーム「FINAL FANTASY VII REBIRTH」パッケージ版の2枚組ディスクに不備が発生していると発表した。 FF16の不正入手を確認 スクエニは「徹底的に調査を進める」 リーク映像は削除へ スクウェア・エニックスは、6月22日発売予定の新作ゲーム「ファイナルファンタジーXVI」が不正に入手されていると発表した。調査す
「弊社は情シス部門の人員を削減し、営業力を強化します!」「プロジェクト管理ツールなんていらない、Excelで十分!」──東京都内のとあるホテルで、情報インシデントやトラブルにつながりそうな“死亡フラグ”発言が男女4人から飛び交った。 ──2022年10月、こんな書き出しの記事を掲載した。見出しは「“限界情シス”をゲームで体験 HENNGEの『情シスすごろく』遊んでみた インシデントまみれの1カ月、無事に乗り切れるか」。内容は、セキュリティ企業のHENNGEがユーザーコミュニティー向けに作ったボードゲームを遊んだ体験記事だ。 そして24年4月18日、この「情シスすごろく」にまさかの新作「情シスすごろく2」が登場。早速試遊してきたので、レビューをお届けする。結論から言えば、現地では「社員を信じてメール誤送信防止ツールは解約します」「大した提案がないので、外資系ITコンサルとの契約は解除します」
115人の参加者を対象に、1~9までの数字を使って300桁のランダムな数列を2回生成してもらう実験を行った。参加者には、数字の出現頻度ができるだけ均等になるよう意識しながら、なるべく予測不能な数列を生成するよう求めた。 そして、2つの数列の類似度を定量化する独自の手法を用いて分析したところ、わずか300桁の数列だけでも、同一人物が生成した数列と、別人が生成した数列を、96.5%の高い精度で見分けられることが分かった。 この現象は、個人によって好む数字の並びや、避ける数字の並びが異なることに起因しており、1週間後に再度実験を行っても、その傾向は変わらなかった。つまり、数列に現れる規則性は、その人固有の認知的な「指紋」のようなものだといえる。 また、この個人差が、単なる認知能力の違いでは説明できないこと、また、個人になじみ深い数字の並び(電話番号や郵便番号、生年月日など)が影響しているわけでも
アニメ業界の労働時間の中央値は月間225時間に──一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟(NAFCA)は3月27日、こんな調査結果を発表した。アニメ業界にある「低収入・長時間労働」というイメージと、実態がどの程度合致、もしくは乖離しているのか確認するために調査したという。 調査では、アニメ業界従事者から323件の回答を獲得。回答者はアニメーター(191人)、演出(44人)、制作関係(35人)キャラ・メカデザイン(27人)、監督(20人)、仕上げ(15人)、美術(14人)、撮影(11人)、CG(11人)、音響関係(10人)、シナリオライター(4人)。 労働時間について聞くと、全体の71.4%が1日8時間以上、30.4%が10時間以上働いていると回答。また1カ月の平均的な休日数については、58.8%が6日未満であると答えた。これらの結果から、月間平均労働時間を計算したところ、平均が219時間、
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。 Twitter: @shiropen2 カナダの研究所Perimeter Institute for Theoretical Physicsとエジンバラ大学に所属する研究者らが発表した論文「The Penrose Tiling is a Quantum Error-Correcting Code」は、繰り返さないパターンである「ペンローズ・タイリング」が、量子コンピュータの誤り訂正に応用できることを提案した研究報告である。 量子コンピュータは量子力学の原理を利用することで、従来のコンピュータでは解くことが難しい問題を高速に解くことができる。しかし、量子情報は環境ノイズからの影響に
オーストラリア国立大学(ANU)は2月20日(現地時間)、太陽の500兆倍明るい天体を発見したと発表した。宇宙で最も明るい天体といわれる「クエーサー」の一種で、これまでに確認している天体で最も光度が高いという。今回見つかったクエーサーは「J0529-4351」と呼ばれ、地球から120億光年以上先の宇宙で見つかった。 多くの銀河には巨大なブラックホールが存在していると考えられている。そのブラックホールが周囲のガスやちりを吸い込んだ際、ブラックホールの周りには「降着円盤」と呼ばれる円盤が生まれる。降着円盤内では物質同士の摩擦によって、温度がセ氏数十万度以上に上がり、物質がプラズマ化してX線や可視光線などさまざまな電磁波を放出する。クエーサーは、このような銀河の中心部分にあるとされている。 今回見つかったクエーサーの周囲にもブラックホールがあり、その質量は太陽の170億倍以上。研究チームは「この
集英社は2月21日、「週刊少年ジャンプ」で連載中の漫画「ルリドラゴン」をマンガアプリ「少年ジャンプ+」とデジタル版週刊少年ジャンプでの連載に移籍させると発表した。3月4日発売の週刊少年ジャンプ14号から7~11話を毎週掲載し、12話から少年ジャンプ+とデジタル版週刊少年ジャンプでの隔号連載へ移行する。 ルリドラゴンは眞藤雅興さんが描くファンタジー・日常漫画。高校1年生の青木瑠璃がある朝起きると、頭から角が生えていることに気付く。そこから、自分の父親がドラゴンであり、自身が人間とドラゴンの混血であることを知る──という内容。2022年に連載を開始したが、眞藤さんの体調不良により6話の掲載以降、無期限休載となっていた。 一方で、宝島社が主催する話題になっている漫画ランキング「このマンガがすごい!2024」ではオトコ編 第9位を獲得していた。X上でも、今回の発表に喜びの声を上げるユーザーが多く「
Google DeepMindのAI気象予測モデル「GraphCast」、従来予報を大きく上回る性能との研究結果 Google DeepMindは、「Graph Neural Network」(GNN)採用の気象AIモデル「GraphCast」をオープンソースで公開した。欧州中期天気予報センターのデータでトレーニングされており、向こう10日間の気象予測を約1分で生成する。 米Google DeepMindは11月14日(現地時間)、「前例のない精度で中期天気予報を行うことができる」と謳う気象AIモデル「GraphCast」を発表した。 同日に科学雑誌「Science」に掲載された論文によると、世界の気象状況を最大10日前まで予測する場合、GraphCastは気象シミュレーションシステム「欧州中期天気予報センター」(ECMWF)の「高解像度予報」(HRES)より正確かつ迅速だったという。 異
地球から約3100万km離れた宇宙の果てから、“猫動画”の送信に成功した──米NASAは12月18日(現地時間)、こんな事実を発表した。実験は、宇宙の遠方の領域「深宇宙」にいる探査機「Psyche」からレーザー通信を試みる技術検証として実施。地球と月の距離の約80倍という長距離での超高解像度の猫動画を送信することに成功したという。 今回NASAが送信した映像は約15秒ほどのもので、YouTubeでも公開中。映像上部には「THIS IS A TEST」の字幕が付き、中央にはPsycheの軌道などが描かれている。一方、映像の背景にはソファの上で猫がレーザーを追いかける様子が映し出されており、正直それ以外の情報は頭には入ってこない。 この猫は「テーターズ」という名前で、実験を行ったジェット推進研究所職員の飼い猫という。NASAは猫の動画を送信した理由について「この重要な実験をより記憶に残るものに
「イナズマイレブン」「レイトン教授」シリーズなどで知られるゲーム会社・レベルファイブが、ゲーム開発やプロモーション業務で生成AIを活用していることが分かった。政府が12月11日に開催した「AI時代の知的財産権検討会」に同社が提出した資料から判明した。資料では、生成AIの活用例を複数紹介している。 同社は画像生成AI「Stable Diffusion」を活用しているという。例えば、24年に発売予定のゲーム「メガトン級ムサシW」では、タイトル画面のレイアウト案をAIで複数生成し、それを参考に世界観に合ったイラストを作成。イラストをベースに映像も作成し、タイトル画面に使ったとしている。 「妖怪ウォッチ」シリーズの例では、主人公・天野景太の3Dモデルのイメージ画像を作成する際の例を紹介。過去の作品で使った画像をAIに複数学習させ、さまざまな質感の画像を出力。目指す雰囲気を伝えるのに使ったという。ま
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。 Twitter: @shiropen2 本物の鵜が鮎を捕まえるとき、水中に潜り鮎をくちばしで捕まえ、水面に浮上した後で丸のみする。この研究は、のみこみを再現する装置「腹結」、首が冷たくなる感覚を再現する装置「首結」、鵜のくちばしを模した装置、そしてVR HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を組み合わせ、鵜が鮎を捕獲する一連の感覚を再現する。 まず、のみこみを再現する装置は、電気通信大学野嶋研究室の研究チームが開発した嚥下感再現装置「Grutio」(1)をベースにして改良を行った。先端に接着電極が付いた平たいひもを備え、内蔵するサーボモーターでひもを引っ張ることができる。 (1)
磁気浮上は、磁気の反発力を利用して物体を浮かせる技術である。同じ極同士の磁石が互いに反発する性質を基にしている。この技術の代表例は、磁気浮上式鉄道である。摩擦を減少させることで、高速走行が可能となる。 2年前に新しい磁気浮上法が発見された。この技術は、2021年にハムディ・ウカル氏によって初めて実証された。彼はモーターに1つの磁石(ローター)を取り付け、磁石の極間の軸がモーターの回転軸と直交するように配置。ローターは約1万rpmで回転し、第2の磁石(フローター)の上に持っていくと、フローターが動き始めて浮上し、ローターの数cm下で宙に浮かんだ。 この磁気力は、フローターを上方向に持ち上げるだけでなく、システムの回転軸が水平であっても、フローターは固定されたように一定の距離を保ち、安定して浮上した。 21年の初期の研究では、浮上力のための説明や多くの実験構成を示したが、フローターの回転の動き
“メンヘラ配信者育成ゲーム”が全世界で100万本売れるまで 関係者が販売データを赤裸々公開:CEDEC 2023(1/3 ページ) ゲーム開発を手掛けるワイソーシリアス(東京都港区)が2022年1月に発売したPC/Nintendo Switch向けアドベンチャーゲーム「NEEDY GIRL OVERDOSE」。「配信者」「インターネット」「承認欲求」「メンヘラ」などアンダーグラウンドかつインモラルなテーマを扱った作品で、ライターのにゃるらさんが企画・シナリオを手掛けたことで注目を浴びた。 売り上げは世界累計で120万本超(23年7月時点)。大手に比べて小規模なレーベルの作品ながら、100万本越えの大台を突破した。その背景には、日本だけでなく世界を意識した販売戦略があったという。 パシフィコ横浜で8月23日から25日にかけて開催されたゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2023」では
数学の未解決問題「ABC予想」を証明する理論の欠陥を指摘できれば賞金1.4億円──一般社団法人日本財団ドワンゴ学園準備会(東京都中央区)は7月7日、そんな取り組みを始めると発表した。発起人はドワンゴ創業者である川上量生さんだ。 ABC予想は、自然数の足し算と掛け算に関する予想で、この予想を仮定すると数論に関する多くの予想や定理を導けることから、数論における重要な未解決問題として知られる。この問題を証明する理論として、京都大学数理解析研究所の望月新一教授は「宇宙際タイヒミューラー理論」(Inter-Universal Teichmuller, IUT理論)を提唱している。 望月教授がIUT理論の論文を公開したのは2012年。7年半の査読期間を経て、京都大学数理解析研究所が編集する国際論文誌「PRIMS」に2021年に掲載された。IUT理論を巡っては、理論の正しさに懐疑的な数学者が存在する一方
米Google傘下のAI企業Google DeepMindは6月7日(現地時間)、アルゴリズムを開発するAI「AlphaDev」が、人間が考えたものより高速なソートアルゴリズムを発見したと発表した。 ソートアルゴリズムは、入力されたデータを一定のルールに基づいて並べ替えるもの。ネット検索結果の並べ替えやランキング制作などIT技術の根幹を担う技術の一つ。今回AlphaDevが考案したアルゴリズムは既存のものに比べて、少量のデータなら最大70%、数十万規模の大量のデータなら約1.7%速く処理できた。 DeepMindはAlphaDevに新しいアルゴリズムを発見させるため、ソートの作業を「組み立てゲーム」としてプレイさせた。「正確にソートできる」「既存のアルゴリズムより高速である」という2点を満たせばクリアとした。 関連記事 OpenAIやDeepMindのCEOやトップ研究者ら、「AIによる人
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