僕はアートの分野で活動し始めて数年になる。 アーティストというと、「自己表現」という言葉を思い浮かべる人がいるかもしれないが、僕は「自分」にはあまり興味がない。興味のあるのは、人と人との関係だ。 たとえば僕の作品の体験は、それに接した人の日常生活に持ち帰られ、検討されてほしい。同時にそこで何かを刻みこみ、刻み込まれたものはいつかまた僕に返ってくるような働きをもつものであってほしい。 作品の形式がどんなであれ、そういうことを願っている。 しかしそうは言っても、展覧会場での体験をナマのまま維持し続けることは難しい。 それは記憶の中で、やがてイメージに置き換えられてしまうだろう。会場で説明を聞いて、わかった気にもなるだろう。体験してないのに記録や批評で知った気になることもある。何かを刻み込むことなく、双方向の働きもなく、それは単にアート作品として登録され消費される。 そうした中に自分の作品が置か