タグ

ブックマーク / book.asahi.com (65)

  • イスラエルはどうしてあんなにひどいことができるの? 早尾貴紀——後編|じんぶん堂

    記事:平凡社 パレスチナ・イスラエル問題に関するオンラインセミナー「パレスチナ連続講座」に登壇する東京経済大学教授の早尾貴紀さん 書籍情報はこちら 《前編はこちらから》 ホロコーストを経験したユダヤ人とイスラエル 「ホロコーストを経験したユダヤ人が、どうしてジェノサイドをする側になるのか」という質問をよく受けます。そのことについて、2023年に日でも公開された『6月0日 アイヒマンが処刑された日』という映画を例にお話しします。ナチスの戦犯アドルフ・アイヒマンは1960年に逮捕され、62年にイスラエルで処刑されました。映画ではその死体を焼却する炉を作る過程が描かれます。映画に登場する鉄工所の社長、作業員、臨時に雇われた少年工は、それぞれ、「イスラエル国民」を構成する3階層のユダヤ人グループに属しています。 1つめのグループは、イスラエルの建国運動を中心的に担った人たちです。ヨーロッパ出身で

    イスラエルはどうしてあんなにひどいことができるの? 早尾貴紀——後編|じんぶん堂
  • 独裁者の胃袋をつかむ 「元お抱え料理人」たちの証言! ヴィトルト・シャブウォフスキ『独裁者の料理人』|じんぶん堂

    記事:白水社 歴史の重要な瞬間に、彼らは何を目にしたか? ヴィトルト・シャブウォフスキ著『独裁者の料理人 厨房から覗いた政権の舞台裏と卓』(白水社刊)は、5人の独裁者──サダム・フセイン、イディ・アミン、エンヴェル・ホッジャ、フィデル・カストロ、ポル・ポト──に仕えた料理人たちの人生と時代背景を描く。各章にレシピ付き。〈グルマン世界料理賞〉受賞作。 書籍情報はこちら 『独裁者の料理人 厨房から覗いた政権の舞台裏と卓』目次 ヴィトルト・シャブウォフスキ(Witold Szabłowski、1980年生まれ)[photo: Rafał Komorowski – CC BY-SA 4.0] 長年、私は社会や政治関連のテーマについて新聞に寄稿してきた。その間ずっと料理人には惹かれていたものの、いかにして厨房を再び我が人生の軌道に加えたらよいか思いつかなかった。ある日、スロバキア系ハンガリー人

    独裁者の胃袋をつかむ 「元お抱え料理人」たちの証言! ヴィトルト・シャブウォフスキ『独裁者の料理人』|じんぶん堂
  • きのしたブックセンター(大阪) 直木賞作家・今村翔吾さんが買った街の本屋「未来を夢想するチャレンジ」|好書好日

    大阪は箕面市にある「きのしたブックセンター」という書店が、作家の今村翔吾さんがオーナーになりリニューアルオープンした、という記事を目にしたのは、2021年の終わり頃だった。 を書く人が自ら書店を始めるとは。大変興味深いと思い、取材依頼をするものの、『塞王の楯』(集英社)が直木賞を受賞したタイミングと重なり、日程が合わないままになっていた。 箕面は大阪市内から少し離れているので、出張のついでに立ち寄るのはちょっと難しい。「いつか行けたらなあ」と思っていたところ、今村さんがナビゲーターをつとめるラジオ番組に、担当編集のよっしーがゲストでお呼ばれすることになった。これは再交渉のいい機会! と思っていたら、あっという間に取材日程が決まった。 駅舎の向こうに見える緑は、ハイキングコースになっているらしい。 まさかのご人登場 ということで初めて訪れた阪急電鉄箕面駅を過ぎると、小高い丘のような低山が

    きのしたブックセンター(大阪) 直木賞作家・今村翔吾さんが買った街の本屋「未来を夢想するチャレンジ」|好書好日
  • 重版未定本の復刊を実現、売り切った書店員の情熱:書泉グランデ・大内学さん|じんぶん堂

    記事:じんぶん堂企画室 「書泉グランデ」書店員・大内学さん 書籍情報はこちら 『中世への旅 騎士と城 』の魅力 の街・神保町に店を構える「書泉グランデ」は、1948年(昭和23年)創業の老舗書店。鉄道、アイドル、格闘技をはじめとした趣味人向けの専門性の高い書籍を網羅的に取り揃えている。 今回、重版されたのは『中世への旅 騎士と城 』(白水uブックス)(著者:ハインリヒ プレティヒャ、翻訳:平尾浩三)。中世ヨーロッパの騎士たちの日常生活などを、豊富なエピソードをまじえてわかりやすく解説している。日では1982年に翻訳刊行され、2010年に白水uブックスで復刊された。大内さんが同書に出会ったのは、中学生時代だったという。当時、初めて読んだ感想を次のように語る。 「ゲームライトノベルの多くが中世ヨーロッパの世界を下敷きにしていました。例えば、友達同士で会話しながら遊ぶボードゲーム・テーブル

    重版未定本の復刊を実現、売り切った書店員の情熱:書泉グランデ・大内学さん|じんぶん堂
  • 「君たちはどう生きるか」宮崎駿監督が、新作映画について語っていたこと。そして吉野源三郎のこと|好書好日

    宮崎駿監督の新作「君たちはどう生きるか」ポスター=スタジオジブリのTwitterより 「私自身、訳が分からない」 「おそらく、訳が分からなかったことでしょう。私自身、訳が分からないところがありました」。 2023年2月下旬、東京都内のスタジオで上映された、「君たちはどう生きるか」の初号試写。米津玄師の歌うピアノバラードが流れ、エンドロールが終わった瞬間、灯りが点き、宮崎駿監督のコメントが読み上げられた。 客席から軽い笑い声が漏れた。私もその一人だった。あまりの展開の速さと、盛り込むだけ盛り込まれた情報を消化しきれず、茫然と座り込んでいたが、その言葉で我に返った。 これは「宮崎アニメ」の集大成なのか、吉野源三郎の著書『君たちはどう生きるか』の再解釈なのか。とにかく、1回見ただけではとても全容を把握できなかった。 「自分のことをやるしかない」 今回の作品は、公開前のプロモーションも、メディア関

    「君たちはどう生きるか」宮崎駿監督が、新作映画について語っていたこと。そして吉野源三郎のこと|好書好日
  • 差別や偏見を含んだ古典、新訳やリメイクが与える新たな視点 鴻巣友季子の文学潮流(第3回)|好書好日

    先日、演劇界のアカデミー賞と言われるトニー賞が発表されたが、ミュージカル作品賞に禁酒時代のシカゴを舞台にした「お熱いのがお好き」が候補入りしていて驚いた。あのマリリン・モンロー演じる白人の、ブロンドの、美女の、セックス・シンボルが旋風を巻き起こしたコメディ映画(1959年、ビリー・ワイルダー監督)の舞台化。しかもギャングに追われた主役のバンドマン2人が女装して女性だけの楽団に入団する。いろいろな意味で差別と偏見(とみなされうるもの)の地雷原みたいな内容なのである。 まだ観劇できていないが、当世のブロードウェイらしいリメイクに仕上がっているようだ。モンローの演じたシュガーには黒人の女優が、バンドマンのジェリーにはノンバイナリーの俳優が配され、同性婚の描き方を含め、ジェンダーとセクシュアリティの揺らぎが表現されているらしい。 いまアメリカを真っ二つにしている論点というと、ジェンダーや妊娠中絶を

    差別や偏見を含んだ古典、新訳やリメイクが与える新たな視点 鴻巣友季子の文学潮流(第3回)|好書好日
  • 文學界新人賞・市川沙央さん 「なにか職業が欲しかった」ままならぬ体と応募生活20年の果てに 「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」#1|好書好日

    第128回文學界新人賞 受賞作品「ハンチバック」 親が遺したグループホームで裕福に暮らす重度障害者の井沢釈華。Webライター・Buddhaとして風俗体験記を書いては、その収益を恵まれない家庭へ寄付し、Twitterの裏垢では「普通の人間の女のように子どもを宿して中絶するのが私の夢」と吐きだす。ある日、ヘルパーの田中に裏垢を特定された釈華は、1億5500万円で彼との性交によって妊娠する契約を結ぶ――。 療養生活という名の引きこもり 取材は市川さんが両親と暮らす自宅で行われた。お母さんに案内された部屋で、市川さんと目が合った瞬間、その射貫くような眼差しに気圧された。市川さんは筋疾患先天性ミオパチーという難病により、人工呼吸器を使用しているため、発話に大変な体力を使い、リスクもある。そのため取材も、あらかじめメールで回答をもらい、補足のみ、最小限お話いただく形をとった。 目力の強さはそれが市川さ

    文學界新人賞・市川沙央さん 「なにか職業が欲しかった」ままならぬ体と応募生活20年の果てに 「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」#1|好書好日
  • 特別公開:坂本龍一さん3万字インタビュー後編「この日本という国では『やめる』という決定を誰もできない。撤退ができない国なんです」|じんぶん堂

    記事:平凡社 坂龍一さん(2013年5月撮影) 撮影:榎佳嗣 書籍情報はこちら 【前編はこちらから】特別公開:坂龍一さん3万字インタビュー前編「音楽の大きなテーマは、亡くなった者を悼むということ」 震災のことは、一日も忘れたことはない ――東日大震災からすこし時間が経って(インタビュー時は2013年)、社会が平熱に戻った感じがします。被災地では、被災地だからこそ「ようやく震災や原発のことは考えず穏やかに過ごせる時間が増えた」という方もいるようですね。 坂:うーん……。僕は、忘れるという感じはまったくありません。 ――時間が経つにつれて、ふだんの暮らしと「変えていかなくちゃ」という気持ちとをどう両立させていくのかが大切なテーマだと考えるようになってきました。安倍政権に代わってから「原発を動かそう」というムードが強まっていますよね。けれど「どんなふうに暮らしていけば、おなじことを二度

    特別公開:坂本龍一さん3万字インタビュー後編「この日本という国では『やめる』という決定を誰もできない。撤退ができない国なんです」|じんぶん堂
  • 特別公開:坂本龍一さん3万字インタビュー前編「音楽の大きなテーマは、亡くなった者を悼むということ」|じんぶん堂

    記事:平凡社 坂龍一さん(2013年5月撮影) 撮影:榎佳嗣 書籍情報はこちら バッハの「マタイ受難曲」を聴くと、まさに「音楽に救われる」という感じがする ――東日大震災と原発事故はだれしもにとってたいへんショッキングなできごとだったと思います。坂さんはどうお過ごしでしたか。 坂龍一:うーん……、直後はやっぱり、音楽を聴く気になれませんでした。 ――音楽家の方でも、音楽が聴けなくなるんですか。 坂:ええ、(音楽家には)きっとそういう人は多いと思いますよ。それで、ずいぶんと経ってから……、ひと月ほど経ってからかな、やっと聴いてみようかなと思ったのは。 ――そのときに、慰めや励ましになったもの、あらためて立ちかえったものってありますか。 坂:それは、やっぱりどうしてもバッハの「マタイ受難曲」です。僕のまわりの音楽好きでも同じようにいう人は多いけれど、やっぱり特別な曲ですね。「また

    特別公開:坂本龍一さん3万字インタビュー前編「音楽の大きなテーマは、亡くなった者を悼むということ」|じんぶん堂
    yukatti
    yukatti 2023/04/07
    インタビュー後半、今読むと悲しい。
  • ナチズム研究の世界的権威が「断末魔の10カ月間」に迫る イアン・カーショー『ナチ・ドイツの終焉 1944-45』|じんぶん堂

    記事:白水社 ナチズム研究の世界的権威が、第三帝国末期の「断末魔の10カ月間」に迫る! イアン・カーショー著『ナチ・ドイツの終焉 1944-45』(宮下嶺夫訳・小原淳解説、白水社刊)は、学術性と物語性が融合した傑作巨編。 【地図9点、カラー口絵16頁収録】 書籍情報はこちら 【著者インタビュー動画:DAS ENDE von Ian Kershaw】 初めに 1945年初頭、惨憺たる敗戦が迫りつつあったころ、ドイツではしばしば、「終焉なき恐怖よりは、恐怖ある終焉」の方がましだという言葉が聞かれた。結局彼らが経験したのは、「恐怖ある終焉」だった。それは、歴史上前例のない方法と規模とで彼らを襲い、巨大な破壊と膨大な人命の喪失をもたらした。この災厄のほとんどは、ドイツが連合国の要求する降伏条件に屈していたならば避け得たはずのものだった。それゆえ、1945年5月以前、ドイツが降伏を拒否し続けていたこ

    ナチズム研究の世界的権威が「断末魔の10カ月間」に迫る イアン・カーショー『ナチ・ドイツの終焉 1944-45』|じんぶん堂
  • 近藤ようこさん「高丘親王航海記」インタビュー 澁澤龍彦作品の“明るさ”に惹かれて|好書好日

    文:朝宮運河 写真:斉藤順子 近藤ようこ(こんどう・ようこ)マンガ家 1957年新潟県生まれ。國學院大學在学中の79年、雑誌「ガロ」に投稿した「ものろおぐ」でデビュー。『見晴らしガ丘にて』で第15回日漫画家協会賞・優秀賞、『五色の舟』(津原泰水原作)で第18回文化庁メディア芸術祭・マンガ部門大賞を受賞した。主な作品に『悲しき街角』『遠くにありて』『ルームメイツ』など。『妖霊星』『宝の嫁』など中世日を舞台にした作品や、『戦争と一人の女』(坂口安吾原作)、『夢十夜』(夏目漱石原作)、『死者の書』(折口信夫原作)など、日文学のコミカライズでも高い評価を受けている。 これまで描いたことのない世界を描く ――澁澤龍彦の小説をコミカライズした『高丘親王航海記』の1・2巻が同時発売されました。9世紀に実在した高丘親王(平城天皇の皇子)の天竺への旅を描いた、奇想天外な冒険記です。幻想文学の傑作として

    近藤ようこさん「高丘親王航海記」インタビュー 澁澤龍彦作品の“明るさ”に惹かれて|好書好日
  • 佐藤亜紀「スウィングしなけりゃ意味がない」書評 反ナチスの悪ガキがあける風穴|好書好日

    スウィングしなけりゃ意味がない [著]佐藤亜紀 ナチスは、青少年を教化し愛国心を育てるため、ヒトラー・ユーゲントを組織した。だがナチス的な規律や美徳に反抗する少年少女もいたようだ。この史実をベースにした書は、ナチスが「退廃音楽」として排斥したジャズに熱狂する若者たちを描いている。 1940年代初頭、ドイツの都市ハンブルク。軍需会社社長の御曹司「ぼく」は、スウィング・ジャズ愛が高じて英語風の愛称エディを名乗り、カフェで仲間と遊ぶ毎日を送っていた。 アメリカの黒人文化が生んだジャズが大好きなエディは、アーリア人の優越を唱え、ユダヤ人や黒人を劣等民族とするナチスの方針などどこ吹く風、人種的な偏見がない。それどころか、ユダヤ人が何代もアーリア人と結婚し続ければユダヤ人と見なされなくなり、純粋なアーリア人でもユダヤ教に改宗すればユダヤ人になる法律を、ナンセンスと嘲笑(あざわら)っているのだ。 ここ

    佐藤亜紀「スウィングしなけりゃ意味がない」書評 反ナチスの悪ガキがあける風穴|好書好日
    yukatti
    yukatti 2019/07/04
    佐藤亜紀『スウィングしなけりゃ意味がない』、末國善己氏による書評。 朝⽇新聞2017年4月16日掲載。
  • 朝日新聞「平成の30冊」を発表 1位「1Q84」 2位「わたしを離さないで」 3位「告白」|好書好日

    1位 『1Q84』(村上春樹、新潮社、2009年) 『1Q84』はBOOK1・2が平成21年、翌年BOOK3が刊行された。夜空に二つの月が浮かぶ「1Q84年」の世界で、10歳で離ればなれになった青豆と天吾が再会するまでの物語。カルト教団も描かれたことで、高い注目を集めた。毎日出版文化賞。21年の年間ベストセラー第1位(日販調べ)で、単行・文庫の累計部数は約860万部。 京都大教授の中西寛さんは「平成時代において最も注目を集めた文芸作品。野茂英雄が野球の世界で行ったように、日語文学の世界性を意識させた」と解説する。コラムニストの堀井憲一郎さんは「平成時代は『村上春樹の時代』でもあった。この書籍に対する期待度と売れ具合は尋常ではなかった。日常生活でふつうの人が小説を話題にできた最後の作品だったかもしれない」と評価した。文筆家の青木奈緒さんも「平成の日の世相を描いた、平成を代表する小説」と

    朝日新聞「平成の30冊」を発表 1位「1Q84」 2位「わたしを離さないで」 3位「告白」|好書好日
    yukatti
    yukatti 2019/03/07
    『マークスの山』も思い返すとすごく当時の社会情勢や空気をパッケージしてあった感。いくつか読み返したくなったな……
  • ガンダムにハマる夜 湊かなえ|好書好日

    年明けに新作が出せるかどうかという瀬戸際にもかかわらず、アニメにハマってしまいました。「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」です。 現在45歳。子どもの頃にガンダムシリーズを楽しむことができず、自分とは無縁の世界だと決め付けていたのですが、きっかけになったのは、MISIAの楽曲「オルフェンズの涙」です。 2015年に発売されたこの曲を、ある歌番組で聴き、感銘を受けました。オルフェンズとは孤児たちという意味で、アニメのエンディングテーマとして作られたと知り、この世界観を持つ物語にぜひ触れてみたいと思ったのです。 とはいえ、ガンダムか。そんな気持ちで、1期分・全9巻のDVDのうち、1巻だけ借りたのですが、1話目から、不遇な環境に生まれ育った少年たちの物語に引き込まれ、その日のうちに、残りをすべて借りに行きました。 DVDを入れ替えるごとに、罪悪感が込み上げてきます。こんなことをしている暇はな

    ガンダムにハマる夜 湊かなえ|好書好日
  • 書評・最新書評 : スウィングしなけりゃ意味がない [著]佐藤亜紀 - 末國善己(文芸評論家) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    ■反ナチスの悪ガキがあける風穴 ナチスは、青少年を教化し愛国心を育てるため、ヒトラー・ユーゲントを組織した。だがナチス的な規律や美徳に反抗する少年少女もいたようだ。この史実をベースにした書は、ナチスが「退廃音楽」として排斥したジャズに熱狂する若者たちを描いている。 1940年代初頭、ドイツの都市ハンブルク。軍需会社社長の御曹司「ぼく」は、スウィング・ジャズ愛が高じて英語風の愛称エディを名乗り、カフェで仲間と遊ぶ毎日を送っていた。 アメリカの黒人文化が生んだジャズが大好きなエディは、アーリア人の優越を唱え、ユダヤ人や黒人を劣等民族とするナチスの方針などどこ吹く風、人種的な偏見がない。それどころか、ユダヤ人が何代もアーリア人と結婚し続ければユダヤ人と見なされなくなり、純粋なアーリア人でもユダヤ教に改宗すればユダヤ人になる法律を、ナンセンスと嘲笑(あざわら)っているのだ。 ここには、世界的に広

    書評・最新書評 : スウィングしなけりゃ意味がない [著]佐藤亜紀 - 末國善己(文芸評論家) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
    yukatti
    yukatti 2017/04/29
    末國善己氏による書評。朝日新聞2017年4月16日掲載
  • コラム別に読む : 殿様は「明治」をどう生きたのか [著]河合敦 - 青木るえか | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    ■“最後の大名”の生々流転 書名を見てわかる通り、明治維新を乗り越えた「殿様」がどう暮らしたか、というネタを歴史学者が集めたで、大量の「大名」様が、明治維新にあって、ヒドイ目にあう、ちゃっかり切り抜ける、ぼう然としている、などの様が紹介される。突然領地を没収された殿様が、どう身を処し、家来を守っていくか。一種のビジネス書として読むことも可能だが、そんなことよりも「殿様が右往左往している」のを面白く読むほうが楽しい。 会津藩の松平容保や土佐藩の山内容堂など、時代劇に出てくるような有名大名から、広島藩の浅野長勲、米沢藩の上杉茂憲、徳島藩の蜂須賀茂韶といった「幕末史的にそれほど有名じゃないが名の知れた大名」の有り様が書かれている。上杉茂憲が沖縄県令になって、独特の(住民を苦しめる)貢租収奪システムの改革に手をつけ、あたかも上杉鷹山のやったように「沖縄を立て直す」気持ち満々だったのが、熱意があり

    コラム別に読む : 殿様は「明治」をどう生きたのか [著]河合敦 - 青木るえか | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
  • 古川日出男「南無ロックンロール二十一部経」書評 時の断層をつなぐ、巨大で真摯な物語|好書好日

    南無ロックンロール二十一部経 [著]古川日出男 あの「二〇一一年三月十一日」によって、福島出身の古川日出男は、小説家としての根的な転生を強いられることになった。それは無論自ら望んでのことではない。意識的な選択でさえなかったかもしれない。だが、その後に書かれた『馬たちよ、それでも光は無垢(むく)で』や『ドッグマザー』、現在も継続中の朗読と音楽による「銀河鉄道の夜」のプロジェクトには、彼の不可逆的な変貌(へんぼう)が刻印されている。では古川は、それ以前とはまったく違う作家になったのか。そうではない。彼は確かに変わった。だが変わらない、変わりようのないものもある。作は、そのことをまざまざと教えてくれる。 巨大で複雑な小説である。三つのパートから成る「書」が七つ積み重ねられる。だから「二十一」。「私」が、病室で昏々(こんこん)と眠り続ける「彼女」を見舞う「コーマW」。牛頭馬頭(ごずめず)の怪物

    古川日出男「南無ロックンロール二十一部経」書評 時の断層をつなぐ、巨大で真摯な物語|好書好日
  • 書評・最新書評 : ミノタウロス 佐藤亜紀著 「荒野」の果てになお残る情動の振幅 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    yukatti
    yukatti 2014/02/03
    2007年。"どの人物にも寄りつこうとしない、荒野さながらのドライな叙述が渺々と続いている""乾いてなお残る人間の情動というものに、読後、深く胸をつかれた
  • 本の記事 : はじめての向田邦子 作家生活1年半、「昭和」を鮮やかに | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    まだ51歳だった作家・脚家の向田(むこうだ)邦子(1929~81)が、飛行機事故で世を去り32年。こまやかな筆遣いで昭和の暮らしを鮮やかに描いた。今も関連出版やリメークが続く。 小林亜星が頑固おやじを演じたホームドラマ「寺内貫太郎一家」(1974年)。この脚をノベライズした作品が、向田の作家としての第一作。ただ活字版はドラマの筋の途中で終わっており、これを書き継ぐ取り組みが続く。執筆はフリー編集者の烏兎沼(うとぬま)佳代さん。7月に「完 寺内貫太郎一家」として新潮社から出版される。 河出書房新社は6月、「文藝別冊 向田邦子」を出版する。単行未収録だった高校生向けエッセーを載せ、角田光代や小池真理子が向田の人気作品と同タイトルのエッセーを書く“競演”で読ませる。編集者の東條律子さんは「作家として格稼働したのは、亡くなる前の1年半とごく短い。なのに今もたくさんの作品が残っている。その

    本の記事 : はじめての向田邦子 作家生活1年半、「昭和」を鮮やかに | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
  • コラム別に読む : 上田早夕里(作家) 「世界」との距離を測るものとして - 上田早夕里 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    子供の頃から児童書やテレビドラマでSFを身近に感じてきた世代なので、ごく自然に、呼吸をするようにSFを楽しんできました。子供時代には、自分が接しているものがSFというジャンルに属する作品だという意識は、まったくありませんでした。海外・国内作品ともに同時期に出会い、「どこか不思議で怖くて面白い作品群」という認識のみで先入観なく作品を読めたのは、いまにして思えば、最良の邂逅(かいこう)でした。 20代の初めにサイバーパンクと出会って、ようやく、リアルタイムのジャンルSFを強烈に意識するという体験をしました。出版社主催の新人賞に応募し始めたのは、30代になってからです。いろいろと事情があって、自分にはそれ以外の道は残されていないのだと気づき、原稿を送るようになったのです。 幸い、そのうちの一が2003年に小松左京賞を受賞し、職業作家としてデビューできました。以後、SFと、SFではないもの(一般

    コラム別に読む : 上田早夕里(作家) 「世界」との距離を測るものとして - 上田早夕里 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
    yukatti
    yukatti 2013/05/29
    "SFを好きになった理由は幾つかありますが、最も大きなポイントは、書き手(および読者)が「自己」と「世界」との間に、どのような距離を取っているか――それが見えやすいという部分でした"