「アクセサリーはして来ないで」「バッグは持って来ないで」「通行人はほとんど、ドラッグ中毒か売人だから、視線を合わさないで」 Chris Arnade(クリス・アーネイド)が愛するニューヨークのストリートは、そういう危険なゾーンだ。彼と会ったのは、マンハッタンから北東10キロの郊外にあるハンツ・ポイント。一緒に歩き始めてすぐに、髪の毛をくしゃくしゃとシニュンに丸め、真っ赤なネイル、イエローのスパッツをはいた細い脚の影が横切った。 薬物中毒者とハンツ・ポイント 「マイケル!」とクリス。「どこにいたんだ、心配したよ。え、今ここに住んでるの?入っていい?」 彼は、クリスの写真に繰り返し表れる、お気に入りのaddict(アディクト、薬物中毒者)だ。雑貨屋の2階に上がる階段の途中で、クリスが一瞬振り返って短く「She」と言う。トランスセクシュアル(性同一性障害)という意味だろう。 部屋に入ると、中にい