経済学の初歩の練習問題に、サンクコスト(埋没費用)というのがある。たとえば、青森から函館まで総工費7000億円かけてトンネルを掘っているとする。工費を6000億円まで使ったところで、札幌までジェット機が就航し、航空運賃のほうが安くなった場合、トンネルは掘り進むべきだろうか? 正解は、開通させることによって上がる利益が、残りの工費1000億円に達しないならば、工事をやめることである。これまでにかかった工費は、回収できないサンクコストだから、今後のプロジェクト費用を計算するときは考えてはいけないのだ。まして青函トンネルや本四連絡橋のように大赤字になることがわかっているプロジェクトは、いつやめても遅くない。 ところが公共事業の類には、「ここまで作ったのだから」というだけの理由で続けられるプロジェクトが多い。さらに長良川の河口堰や諫早湾の干拓のように、完成しても運用しないほうがよいという、二重