ヤクザ映画は〝参加すること〟に意義がある?! その2 【30】高倉健「唐獅子牡丹」 前田和男 翻訳家・ノンフィクション作家 前回では、「唐獅子牡丹」が生み出した「表の世界」にまつろわぬ者たちの束の間のアジールについて、私の世代的な共通体験から検証をこころみた。それをうけて、今回は、別の視座からさらに追究を深めたい。前回も記したが、当時、オールナイト興行以外にも、全共闘運動が燃え盛ったキャンパスで〝まつろわぬ者たちのアジール〟が生まれ、そこでも「唐獅子牡丹」が大きな役割を演じていた。 その象徴的出来事が、1968年11月に東大教養学部で開催された駒場祭のポスターである。作者は、当時東大2年の橋本治(1948~2019)。東大のシンボル記章である銀杏(いちょう)の入れ墨をほった若者の背中が描かれ、そこに「とめてくれるなおっかさん、背中のいちょうが泣いている 男東大、どこへ行く」のコピーが添えら