記者会見に臨む日銀の植田和男総裁=東京都中央区の日銀本店で2023年4月28日午後3時50分、和田大典撮影 日銀担当記者として、歴代最長任期となった黒田東彦前総裁の退任までの日々と、植田和男新総裁の誕生を取材した。その過程で感じたのは、日銀が世間から遊離した「象牙の塔」になりつつあるとの危機感だ。植田氏には国民に届く政策を進め、この状況を是正してほしい。 「大規模な金融緩和はさまざまな効果を上げ、適切だった」。黒田氏は4月7日の退任記者会見で、自身が主導した異次元緩和の成果を語った。3月の会見では雇用の改善を強調し「女性や高齢者を中心に雇用を400万人以上つくり出し、就職氷河期を完全に解消した」と胸を張ったが、あまりにも働く人々の実感とかけ離れてはいないか。 黒田氏が「つくり出した」という仕事の多くは非正規労働が占める。私は公園掃除のアルバイトをする70代の高齢者など非正規で働く人々に話を