グロービス経営大学院でベンチャー戦略の教鞭を取る岡村勝弘氏による新連載。事業創造、変革の特筆すべき事例を取り上げ、ビジネススクールなどで学ぶフレームワークを用いながら、独自の視点で、そこから得られる学びを詳説する。第1回は、新型旅客機「ボーイング787」への採用で気を吐く東レの炭素繊維事業について。 2006年4月、東レの炭素繊維が新型旅客機「ボーイング787」の構造材に全面採用されることが発表となり、耳目を引いた。軽量で柔軟、しかし強靭で耐久性の高い炭素繊維複合材により、ボーイング787は従来機比20%の燃費削減を実現。航空会社各社からの注文が相次ぎ、業界を騒然とさせた。 ボーイング社はこの複合材を、東レに16年間、独占的に供給させる破格の契約を締結。この契約で東レが手にする額は1兆円にも達すると言われる。 ここで疑問が湧くのは、なぜボーイング社は、炭素繊維メーカー同士を競わせ、