毎日新聞の看板コラム「余録」を二十年以上執筆し続けた名物コラムニストが引退するとき、社員を代表して花束の贈呈を任されたのは校閲記者の平山泉、当時32歳だった。以前、平山はコラムニストにこう呼ばれていた―「スカイエネミー(天敵)」、それがベテラン記者の「戦友」と認められたのだ。(斎藤沙帆里・立教大学) ◆華やかなマスコミで校閲は地味な仕事 事件を追いかけてスクープをとばしたり、一世を風靡する有名人と仕事をしたり――華やかなイメージのあるマスコミ業界の中で、「校閲」は最も地味で目立たない仕事だ。誤字脱字のチェックや記事の内容確認を行う。新しいアイデアを付け加えるわけではないし、記事に自分の名前が載ることもない。ただひたすら「調べて確認する」という地道な作業の繰り返しである。 いったい、校閲という仕事の意義とは何なのか。そんな悩みを抱えていた平山に、ある出来事が起こる。毎日新聞の名物コラム「余録